オープンかクローズか、過剰な「秘密主義」がモノづくりにもたらした限界とは?
大企業側に問題があるわけではなく、中小企業の方が「対等な関係」をあえて放棄しているケースもよくあります。その場合はよいのですが、しっかりと知的財産権の所有を考えている中小企業の場合では、大企業側が成果を独占する考えでいては、交渉はまとまらないでしょう。知的財産権を主張してくる企業ほどオリジナリティの高い技術を持っており、魅力的な解を導き出してくれる可能性があります。 オープンイノベーションは企業規模に関係なく、お互いのアイデアを出しあい、自社だけでは解決できない問題の解を導き出すことに価値があります。半面、こうした成果を独占できないことは、オープンイノベーションの課題とも言えます。この成果配分をいかにうまく設計できるかが重要です。自前主義の思想でお互いに成果を独占しようとすれば、契約段階で交渉が決裂してしまうことは当然と言えるでしょう。 ■ 提携先のメリットを事前に考える オープンイノベーションで成果を適切に配分するためには、提携相手のメリットを考える必要があります。しかし、「何もかも自前で作る。外注はあり得るが、下請けに指示しているのも自分たちだ」と考える自前主義が強すぎると、「開発成果が自分たちに帰属するのは当然だ」と考えがちになります。 技術者の中には、相手のメリットを考えるのが苦手だという人をよく見かけます。以下は極端なケースですが、実話です。 A社は高い引張(ひっぱり)強度を持つ特殊な素材を開発しました。この素材は住宅用の建材に活用できる可能性がありました。しかし、まだ試作段階で改善の余地があり、その改善こそが特許になる可能性を秘めた領域です。 そこで、住宅メーカーや建材メーカーに売り込む前に、改善ポイントを押さえるべく、住宅建材に詳しいBという大学教授に意見を求めることにしました。A社がこの素材を開発していること自体が機密なので、B教授には機密保持誓約書にサインをしてもらい、意見を求めました。その時のA社技術者とB教授とのやりとりです。