数年だけ製造された"幻のロレックス"とは? 靴職人たちが愛用する腕時計4選
本気で遊ぶ、自分のための時計づくり
「自分が着けたいと思う時計をつくりたかった」というピュアな想いからシューズデザイナーの手嶋慎が手掛けたのが、国産ブランド・ヴァーグウォッチとのコラボモデルだ。3代目の「BLINKER」は、以前所有していた最後の空冷モデル、「ポルシェ993」の計器をモチーフにしている。インデックスの数字や針はメーターから型を起こし、文字盤外周には回転計同様にレブリミットをデザインした。 「ベルトには自分の靴にも使っているカーフレザーのいいところを切り出して、ドライビンググローブやハンドルのようにパンチング加工を施しました」 自身の趣味を惜しげもなく反映しているが、意外にも腕時計のデザインが靴づくりにフィードバックされることはないという。 「それを考え出すと、遊べなくなってしまうと思うんですよね」 しかしこのベルトは、ラグジュアリーブランドも採用する最高級のレザーである。遊びでつくる時計にも本気で挑む、手嶋のものづくりへの矜持がにじむ一本だ。 VAGUE WATCH CO. / ヴァーグウォッチカンパニー「ブリンカー VW-03」
ブランド開始からともに歩む、分身のような存在
「1950年代に数年しか製造されなかったという防水機構『スーパーオイスタークラウン』が搭載された希少なモデルです。70年以上の時を感じるやけたエイジングの風合いや、文字盤のクリーム色をベースに、くすんだネイビーの秒針とベゼルに用いたイエローゴールドという絶妙な色の組み合わせに惹かれました」 そう言って愛用する腕時計に目を落とす、シューズデザイナーの金子真。収集欲はなく、腕時計は本当に気に入ったものを長く使い続けるという金子だが、高額なこともあり、購入するのは人生の転機を迎えるような時だと語る。 「この時計を購入したのも、ブランドを立ち上げた7年前のこと。以前からこのモデルを気に入り、ずっと探していたのですが、これからさらに頑張らなければならないと決意を新たにした時期にヴィンテージショップで発見しました。これ以上ないタイミングだと思い、迷わず購入したんです」 金子がデザインするシューズは、洗練のフォルムに表れるモダンな気品と靴好きも唸らせる上質なつくりに定評があるが、どことなく漂うクラシカルな雰囲気もファンを魅了する要因だ。 「私の靴は現代的なニュアンスを採り入れつつも、原点には伝統的なスタイルがあります。オイスター パーペチュアルも腕時計における普遍的なモデルであり、その背景にも敬意を込めています」 この時計は自分の分身であり、手放す時は誰かにブランドを預ける時だと語る金子。誕生から70年以上を経てもなお輝くこの時計は、今後もカルマンソロジーの発展とともに時を刻み続けていく。 ROLEX / ロレックス「オイスター パーペチュアル」
写真:宇田川 淳、丸益功紀(BOIL) 文:青山 鼓、小暮昌弘、高野智宏