「成果」急ぐトランプ新政権 公約実現のため“就任初日”から大統領令連発へ
■議会の人事承認に暗雲
そればかりではない。これまで明らかになった人選は本来、重視されるべき担当分野の知識や経験を度外視しているとして、批判の声も上がっている。 トランプ氏は自らの刑事訴追を受けバイデン政権下の司法省を批判し続け、司法長官を重要ポストと位置づけてきた。そして選挙に勝利するや、自身の熱烈な支持者のマット・ゲーツ氏を長官に指名した。 しかし、過去にゲーツ氏が未成年への性的人身売買で捜査対象になったことなどからその資質を問う声が上がり、上院での人事承認の見通しがたたず、本人が辞退。トランプ氏は地元・フロリダ州の司法長官を務めたパム・ボンディ氏の起用を余儀なくされた。 この他、国防長官に指名されたヘグセス氏にも性的暴行疑惑が浮上。国家情報長官に指名されたトゥルシー・ギャバード氏についても過去のロシア寄りの発言などが問題視され、上院での承認が危ぶまれている。 “肝いり人事”のつまずきは政権運営に悪影響をもたらすと考えるのが政界の常識だが、ある外交筋は「トランプ氏は人事で義理を返すことを重視している。上院で承認されなくても、本人はトランプ氏に指名されたことだけで恩義を感じるので、トランプ氏は気にしないだろう」と指摘する。
■大統領就任初日は「独裁者」に
公約を早期実現する布陣を敷いたトランプ氏は、大統領就任初日だけ「独裁者になる」と公言している。バイデン政権との違いを見せつけるために、初日から不法移民対策や関税の引き上げなど重要な政策課題で、多くの大統領令に署名する方針だ。 すでにトランプ氏は、中国への10%の追加関税や、メキシコとカナダに対して25%の関税を課す大統領令に署名すると表明している。最重要公約の1つである不法移民対策では、「大規模な強制送還」のために国家非常事態宣言を発令し、軍を動員することも示唆している。またアメリカで生まれた子どもにアメリカの市民権を与える「出生地主義」に基づく現在の制度を、やめる考えも示した。 2021年1月の連邦議会襲撃事件で訴追されている支持者に恩赦を与える考えも示している。また、気候変動対策の国際的枠組み「パリ協定」から再び離脱し、バイデン政権が推進した電気自動車の普及策をとりやめる方針だ。 外交では、ロシアのウクライナ侵攻による戦闘や、パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘を早期に終わらせるとしている。 トランプ流の人事の下、内政、外交の双方で抜本的な政策転換を矢継ぎ早に行い、任期の前半2年間で幅広い支持を固めることができるのか。トランプ氏の実行力が問われる第2次政権は、2025年1月20日から始動する。