「管理職には就きたくない」若者が半数以上。新世代が描くキャリアとワークライフバランスのありかたとは
「中間管理職は、最高幹部からのプレッシャーと第一線に立つ社員からの要求の板挟みになり、困難なポジションだとみなされることが多いですね」とビセット。「Z世代は自分の親や兄姉が管理職のせいで職場で燃え尽きやストレスを経験したのを見てきた可能性があり、そのルートを取りたくないのかもしれません」 若い従業員がチームを主導する能力に自信を持つよう、もっと効果的なトレーニングが必要だとも彼女は言う。「ロバート・ウィルターズの更なる調査で、イギリスの管理職の5分の3はきちんとしたトレーニングを受けていないという問題点も浮かび上がりました。管理職がきちんと訓練されていなければ、うまく管理したり自分を進歩させたりする効果的なツールを持っていないことになります。雇用者は、リーダーシップの技術と、共感力やコミュニケーションなどソフト面のスキルの両方で効果的なトレーニングを提供することから始めましょう」
中間管理職の魅力を再構築
中間管理職をもっと魅力的にする方法は他にもある。ビセットは企業が給料アップ以上のものをオファーするよう提唱する。 「中間管理職は仕事量の多さとストレスの重荷を負っていることが多いのです」。仕事に対する適度な期待や柔軟な労働条件、ストレス管理に充てる資金を提供することなどを通してワーク・ライフ・バランスを向上させれば、もっとこのポジションが魅力的になる。 「中間管理職に就くと、管理者として求められる仕事のせいで自分のスキルを磨くチャンスが減ってしまい、身動きが取れなくなってしまう人が多くいます。雇用者は、管理職の人があまり干渉しなくても、まとめ役的なやり方で管理できるような枠組みを作ると、管理職の人にもっと時間ができて、個人の仕事の目標に重点を置くことができるようになるでしょう」とビセット。
中間管理職不足は、キャリア構造を長期的に見た場合、どんな影響がある?
“意識的な管理職拒否”は比較的新しい現象ではあるものの、これまでは中間管理職に任されていた責任を、より上席の社員が担わざるを得なくなるかもしれないとビセットは言う。 「こうした役割を担う意思のある若い才能が着実に現れないと、企業は将来の幹部を特定し、準備するのに苦労するかもしれません。若い社員が従来の中間管理職の役割を拒否すれば、企業は階級制ではないとか、プロジェクトごとのリーダーシップ構造を試してみる必要があります」と彼女。 「これから先、職場にZ世代の人数は増えていく一方です。4年前のパンデミック時、私たちはほぼ一夜にして多くの仕事をリモートワークに切り替えましたよね。あの時のように、変化に直面したら素早く方向転換できる能力が必要です。それが出来る企業が、最も立ち直りが早いことを証明できるでしょう」 結果的に、スタートアップ企業と似たような、より一律な組織構造がますます当たり前になるかもしれない。中間管理職は従来とは違って見え始め、チームを率いる能力とは対照的に個人のスキルに重きを置いた出世になる可能性がある。 「管理職は“権限委任”の役割が少なくなり、もっと主導権を持つようチームにやる気を起こさせる役割になるかもしれません。管理職とチームの間のブレストや知識共有がより重視される可能性があります」とビセット。 「最も成功する組織は昇進するための代替ルートを常に持っているものです。若者たちのこのムードから注目されるのは、みんなが管理職をやめるわけではなく、そうであるべきではないということ。職業人はさまざまなスキルを持って集まり、その多様性こそがイノベーションを前進させる原動力となるものです。ですから、みんなの要求を満たす、さまざまな昇進のチャンスがあって然るべきなのです」 組織の枠組みを変えることに関しては、Z世代の従業員がリードしていくのかもしれない一方で、年上の世代もその後に続き始めている。成人したイギリス人の約91%がこの1年間に高度あるいは極度のプレッシャーを経験し、燃え尽き症候群がますます一般的になっていることから、あらゆる年代の人が自分はキャリアに何を求めるかを考え直すようになっている。 「従業員が管理職になる不安や懸念を表明することができる、率直な対話の機会を作ることが、管理職になるのを拒否する根本原因に組織が対処する役にも立ちます。それがみんながもっと心地よく感じる解決策に辿り着くことにつながるのです」とジョシはアドバイスしている。
From Harper's BAZAAR.com