お金がかからないエクササイズ「ラッキング」に全米が注目、手軽に体力がつき心も軽くなる
バックパックに本や缶詰などの重りを詰めて歩くだけ、でも初心者が気をつけるべきことはある
ラッキング(英国ではヨンピング、タビングともいう)は、兵士が重いリュックを背負って歩き、持久力や筋力、精神力を鍛える軍事訓練を起源とするエクササイズだ。今、ジムの器具を使わずに効果的にトレーニングしたい人々の間で人気が高まっている。 「病気を生む顔」になる食べ物とは 画像5点 フィットネス専門家も勧める注目のエクササイズは、手軽に始められて体力を向上でき、メンタルヘルスにもいい。もしかすると、自分ではそうと気づかないうちにラッキングを実践して、すでに効果を得ている人もいるかもしれない。買い物をして食料でぱんぱんになったリュックを背負って歩いて家に帰る、あるいは幼児をおんぶした状態で野山をハイキングする、どちらもラッキングに似た運動だ。 だが、早速バックパックを背負うのは待ってほしい。ラッキングを安全に始めるために、知っておくべきことを紹介する。
2000年代前半から広がり始める
ラッキング(rucking)という言葉は、重りを背負って長距離を歩く強行軍訓練を意味する「ラック・マーチング(ruck marching)」に由来する。紀元前7世紀から軍隊で行われている重要な訓練だ。だが、一般人のフィットネスに取り入れられるようになったのは2000年代前半のことで、米ゴーラックといった企業の力によるところが大きい。 ゴーラックは、元米陸軍特殊部隊のジェイソン・マッカーシー氏が設立した、ラッキング用バックパックやウエイト(重り)を専門に扱う会社だ。同社によると、2023年から2024年にかけて、バックパック製品のRucker 4.0の販売は65%増、ウェブサイトのセッション数は44%増を記録したという。 こうした急激な伸びは、世の中の大きな流れに沿ったものだ。過去10年間で「rucking」の Google検索数は着実に増えており、とりわけ、 コロナ禍で人々がアウトドアアクティビティを求めた2022年ごろに急増している。 ラッキングの大きな魅力は、その手軽さと自由さだ。必要な装備はバックパックと重りだけなので、従来のジムでのトレーニングを単調に感じる人やジムに通えない人にとっては嬉しい選択肢となる。 「ジムでの運動は万人向きではありません」と、英ノッティンガム・トラスト大学の上級運動・健康指導員である ジェン・ウィルソン氏は言う。「ですが、筋力トレーニングは万人にお勧めです。『アウトドアは大好き、ジムは絶対にイヤ』という人にとって、いつものバックパックに少し重りを追加するだけというラッキングは、関節を強化して筋力や回復力を高めるためのとてもいい方法でしょう」 複数の小規模な研究では、ラッキングのような運動は、補助的訓練として効果が高い、あるいは 骨密度を改善するなどを期待できることが示されている。また、「代謝率の向上や心臓血管の健康全般にも寄与する可能性がある」と、ウィルソン氏は補足する。 さらに、ラッキングを特に屋外で行うとき、メンタルヘルスへの効果も期待できる。緑に囲まれた場所で過ごすことは、ストレスを軽減し、健康状態全般を改善することが分かっている。ただし、ウィルソン氏は、アウトドアでのラッキングが理想的だとしながらも、「トレッドミル(ランニングマシンやウオーキングマシン)でも十分効果的です」と話す。