8歳の息子は目の前で死んだ 猪苗代湖ボート事故4年、癒えない遺族の悲しみと「水上法律の壁」
「身に覚えがない」判決まで2年半…被告は即日控訴
それから1年が経った2021年9月に、業務上過失致死傷の容疑で逮捕、起訴されたのはいわき市の元会社役員、佐藤剛被告(当時44歳)、事故を起こしたボートの操縦者だった。瑛大くんの父親はすぐに息子に報告したという。 「ようやく警察が逮捕してくれたよ、まだまだこれからだから、まだまだ頑張るよって」。 しかし、佐藤被告は逮捕直後は「身に覚えがない」と容疑を否認。その年の12月に始まった初公判では「事故を起こしたことに争いはない」としたが、「被害者には気づかなかった」と無罪を主張した。裁判では、佐藤被告の友人が事故直前に撮影した動画や福島県警、国の機関が行った検証結果などが証拠として提出された。さらに、検察側は佐藤被告が事故の捜査を受けていた期間も船舶を操縦、公判で笑みを浮かべるなど、事故に真摯に向き合う姿勢は皆無であると厳しく指摘した。 瑛大くんが亡くなって2年半あまり、公判は7回にのぼった。福島地方裁判所の三浦隆昭裁判長(当時)は「適切な安全確認をしていれば、被害者らを発見し、進路変更して衝突を回避できた」などとして、禁錮2年の実刑判決を言い渡した。瑛大くんの母親は傍聴席から判決を聞く佐藤被告をじっと見ていた。 「判決が出るギリギリまで無罪が出てしまうのではないかとすごく不安で、実刑で禁錮2年と聞いて、涙が出ました。1人1人の意識がこの事故をきっかけに変わってくれれば、何か少しでも変わるのではないかと期待したい」。 公判後、父親は判決に不満を漏らす場面もあったが、ようやく瑛大くんの死と向き合えるのではと語った。 「たったの(禁錮)2年ではとても瑛大に報告できないし、誰のための法律なのか…。ただ、これまでは事故のことばかり考えていて、もう少し瑛大と向き合える時間をそろそろ作らせてくれと思う。」。 しかし、佐藤被告は即日控訴し、保釈された。その控訴審は瑛大くんが亡くなってから4年以上が経過する今月30日にようやく始まる予定である。事故後、母親は義足での生活が強いられている。 「事故も最近のように感じるし、いまだに瑛大がいないのは信じられない気持ちが大きい」。 父親は精神科に通い、仕事に手が付かない日々も長く続いた。癒えることのない深い悲しみを抱え続けている。 「4年も経って、まだうちの件(裁判)も終わっていない。ずっと辛い、どうすることもできないので、ただ…悔しい」。