東京から福島に来た17歳、念願の漁師に 処理水への不安抱えつつ夢追う
福島中央テレビ
2011年3月に起きた福島第一原発の事故で汚染水が漏れ出した福島の海。原発でトラブルが起きる度に不安が渦巻き、福島の魚介類などには猛烈な風評被害が起きた。汚染水を安全なレベルに浄化した“処理水”の海への放出が始まったのがちょうど1年前。風評被害の再燃が懸念されている上に、この状況が30年以上は続くとされる。しかし、そんな海で脈を打つように生きる若手漁師たちがいる。昨年度、福島県の沿岸漁業に新たに就業した人は、統計開始以来、最多となる26人。県外からやってきた新人漁師は、処理水放出への不安を抱えながらも、「将来は福島の海で船を持って立派な漁師になりたい」と夢を追いかけている。 【動画】処理水放出…不安の声とどう向き合うか #福島へのエール
東京からきた17歳の漁師…きっかけは
7月中旬の午前7時過ぎ、福島県相馬市の松川浦漁港に、夜中から漁に出ていた漁船が次々と戻ってきた。福島県沖は親潮と黒潮がぶつかる全国有数の漁場「潮目の海」として知られ、夏のこの時期はカレイやタチウオ、それにシラスなど新鮮な海の幸が水揚げされる。 活気づく港にひと際若い漁師が目に留まる。原瑛貴(はら・てるき)さん17歳。去年の春に東京から単身で福島に住み移り、新人漁師として漁に出ている。学生の時の生活リズムとの違いを聞くと、照れくさそうにはにかむ。 「起きるのは大変だけど、どれくらい多くの魚が捕れるか楽しみで興奮する。それで起きることができる。辛いけど、捕れると楽しい」。 原さんが魚を好きになったのは小学6年生の時。2011年3月に起きた東日本大震災と原発事故の後に、父親がボランティアで福島県沿岸にあるいわき市に入ったのがきっかけだった。父親についてきた原さんは地元の漁師に釣りを教えてもらった。魚を釣り上げる時の達成感を初めて味わい、忘れられない瞬間となった。福島の沿岸にはメバルやアイナメなど多種多様な魚がいて、釣り上げた魚を観察することも好きになったという。 「福島で釣りを覚えて、魚を捕ることがどんどん好きになっていった感じ」。