いま食べるべきラーメンは何系? 屈指の激戦区・東京で生まれた最新の一杯
月30店開業、全国から結集
世界中のグルメを楽しめる東京は、日本の食文化を象徴する場所でもある。ラーメンについてもしかりで、日本中からさまざまな名店や味わいが集結し、日々新たな店がオープンする全国屈指の激戦区となっている。 1都道府県あたりのラーメン店は平均450なのに対し、東京は4倍以上、2000を超える(タウンページ調べ)。さらに月に30店以上が開業し、計算上はほぼ毎日新店がオープンしていることになる。店が集まるターミナル駅周辺のうち、全国一の激戦区として注目を集めるのが新宿エリアだ。200もの店が営業し、その数はコンビニエンスストアにも勝る。
ラーメントレンドの発信地
職人たちの試行錯誤の結果、東京は新たなスタイルを次々と生み出すトレンドの起点となった。それが東京におけるラーメンシーンの魅力のひとつと言える。 つけ汁に麺を浸して食べる「つけ麺」や、麺にタレを絡めた汁なしの「油そば」などは東京で生まれた。スープに着目しても、豚骨スープをベースに豚の背脂を浮かせたコク深い「背脂系」、複数のスープを掛け合わせた濃厚な「ダブルスープ」などのスタイルも東京から全国に広がった。 職人たちの飽くなき探究心はとどまらない。理想とする味に近づけ、店のブランド価値を高めるため、原材料や製法にこだわり自家製麺を使うことも多い。小麦から栽培する職人もいるほどだ。
競争から協力の時代に
さまざまな店が技術とアイデアを競い、ラーメンを進化させてきた結果、東京のラーメン界はいわば戦国時代にある。参入店舗は増加、かつそのレベルは年々高まっている。おいしいラーメンを提供してもすぐに凌駕(りょうが)する店が現れ、パイの奪い合いとなってしまう。リピートしてもらうために、他店との差別化が重要になってくる。 新たな動きも見られる。店同士の横のつながりを重視する傾向が生まれているのだ。相互にコラボメニューを出したり、共同でラーメンフェスなどのイベントを企画したりすることでお店のファンを共有でき、新規客を狙うことができる。門外不出だったレシピを有名店が公開し、業界全体の技術向上に貢献するようにもなった。その結果、さらに新たな味、高品質で多様なラーメンが生まれている。 一方、東京のラーメン文化をしっかりと支えているのはベーシックなラーメンを提供する名店の数々でもある。例えば、創業から半世紀を超える銀座の『萬福』や荻窪の『春木屋』は、長年、東京人から親しまれ、後進の目標となって業界に影響を与えてきた。新たな店やラーメンジャンルが日々生まれる中でも、昔からの実力派の味わいも楽しめるからこそ、東京のラーメンはこんなにも面白いのだ。 そろそろうまい一杯を味わいたくなった人も多いはず。いま食べるべき東京のラーメンをいくつか紹介したい。新進気鋭のラーメン3店と、クラシカルな一杯で愛され続ける名店を2店。5店のラーメンを食べ比べてみれば、東京の豊かなラーメン文化の一端にして典型を知ることができるだろう。