「求人票と違う」月給28万円が17万円に… 悪質すぎる求人詐欺 ブラック企業はなぜ撲滅されないのか
ブラック求人であっても… 不受理のハードルは高すぎる
求人サイト運営側はなぜブラック求人を食い止めることができないのか。 坂倉氏はハローワークを例に挙げて説明した。 「まずハローワークの場合、公共機関ですので、(原則)求人票の掲載の申し込みは拒否できません。疑わしいブラック求人であっても不受理という選択は簡単ではありません。また、ハローワークに勤めている職員から聞いた話によれば、仮に求人票に月給30万円と記していながら実際は月給20万円だった企業に是正指導したとしても、企業は『求人票と実際の条件を合わせればいいんですよね』と、給与を月給30万円に上げることはせずに求人票に書かれている給料を20万円に修正する手口があるそうです。このように開き直る企業も少なくなく、求人詐欺を防止することもやはり容易ではありません」 特に労働環境が劣悪で長時間労働を強いるブラック企業では、まともに求人しても人が集まってこないことが多い。そのため、あの手この手で求人票の待遇をよく見せようとする。公的な職業紹介事業者であるハローワークでも“監視の目”をかいくぐっているというのだから、他は推して知るべしだ。 NPO法人POSSEでは少しでも不健全な求人をなくそうと、10年前から声を上げ続け、そのかいあって2020年3月に職業安定法が改正され、職業紹介事業者は「一定の労働関係法令違反の求人者による求人」の申し込みは拒否できるようになっている。 とはいえ、このハードルもあまりに高いというのが坂倉氏の考えだ。 「『一定の労働関係法令違反の求人者による求人』に該当する求人とは、まず労働基準監督署(労基署)から1年間に2回以上、同一の対象条項違反によって是正指導を受けたものを指します。ただ、労基署は簡単に是正指導に動いてはくれず、なにより1年間に2度も同一の対象条項違反で是正指導を受けるケースはかなりレアです。また、労基署が対象条項違反によって書類送検した場合も含まれますが、これも相当悪質なケースでなければ動くことはなく、年間400件ほどしかありません」 ブラック求人や求人詐欺の実質的な抑止力にはなっていないという。