「選挙圧勝」でも次期トランプ政権は簡単じゃない
■共和党は「労働者の党」へ、民主党は「意識高い系」に ところが2024年選挙ではこれが逆転している。「トランプ氏の下で、共和党は労働者の党に変貌しつつある」というのは、どうやら本当らしいのだ。逆に民主党は、気候変動問題やジェンダー、人種問題などを重視する「意識高い系」の支持者の政党になっていた。 しかるにそれでは、焦点となっていたラストベルトの白人ブルーカラー層の票を取れないのは当たり前だろう。彼らの関心事は、インフレや不法移民といった生活に密着した問題であり、「トランプの再来は民主主義の危機だ」と言われても話がかみ合わないのである。
11月6日のニューヨーク・タイムズ(NYT)紙は、社説で”America Makes a Perilous Choice”(危険な選択をしたアメリカ)と題し、第2期トランプ政権の誕生に対して警鐘を鳴らしている 。この中でNYT紙は民主党に対しても、次のような厳しい言葉を浴びせている。 「民主党は選挙で敗北した理由を厳しく見直さなければならない。バイデン大統領が2期目を務める能力がないと認識するまでに時間がかかりすぎた。民主党の進歩的政策の大部分が、党の最も忠実な支持者を含む有権者を遠ざけていると認識するまでに時間がかかりすぎた」
なにしろNYT紙と言えば、6月27日のテレビ討論会において、バイデン大統領がトランプ氏を相手に大失態を演じた翌日の社説で、”To Serve His Country, President Biden Should Leave the Race”(国に尽くすためにバイデン大統領はレースを去るべきだ)と訴えたほどである。いわば民主党の応援団長みたいな存在だ。「おまゆう」(お前がそれを言うか)という気もちょっとだけするが、危機感の強さには納得である。
■アメリカ以外でも与党が負けまくった2024年 一方で現職の副大統領であるハリスさんとしては、バイデン大統領との差別化が難しかったのも無理はない。今年は世界的に「選挙の年」と言われ、多くの民主主義国で選挙が行われてきた。年末が近づいた今になって振り返ってみると、まことに死屍累々たるものがある。「コロナとインフレ」の後に行われる選挙で、与党が勝つことはかくも難しい。きっと有権者は、「誰かを罰したくて仕方がない!」と手ぐすねを引いていたのであろう。