タコの「頭のよさ」が凄すぎる…「日本一のタコ博士」が驚愕した《触覚》と《視覚》、ハイレベルな知覚の世界
いまだに多くの部分が謎に包まれている不思議な生物・タコ。3つの心臓を持ち、人間にはない臓器を備えるなど、知れば知るほど驚きと発見に満ちた魅惑的な存在です。 【マンガ】南海トラフ巨大地震」の衝撃…そのヤバすぎる「被害の惨状」 そんなタコは「腕で考える動物」であることをご存じですか? タコは人間と同じように触ることで形を認識することができるのです。 本記事では、「日本一のタコ博士」として知られる琉球大学の池田譲さんの著書『タコのなぞ 「海の賢者」のひみつ88』(講談社)より、タコの驚くべき五感の秘密に迫ります。
タコの不思議な五感の秘密
日光東照宮には「見ざる、言わざる、聞かざる」という3匹のサルの彫刻があります。それぞれ両手で目をおおっているサル、口をおおっているサル、耳をおおっているサルです。何かよからぬものは見ないし、言わないし、聞かないようにという「論語」の戒めを3匹のサルは表しています。 見ることは視覚、聞くことは聴覚という感覚です。人間にはこの他に触る触覚、嗅ぐ嗅覚、味わう味覚があり、全部を合わせて五感と言うのでしたね。 私たちはこのような異なる感覚を使って世界を感じています。例えば、赤いリンゴを見たとき、りんごの甘い味を思い浮かべて「おいしそう」と感じます。あるいは、誰かがリンゴをサクッとかじった音を聞いたら、赤いリンゴが頭に浮かんできて自分も食べたくなります。 ここで起きていることは、リンゴを見たら味を思い出し、リンゴをかじる音を聞いたらリンゴの映像を思い出しているということです。つまり、見る情報から味の情報が、聞く情報から見る情報が引き出されているのです。 このようにある感覚から別の感覚が引き出されることをクロスモーダルと言います。 ちょっと難しい言葉ですが、クロスは交わること、モーダルは感じることです。つまり、見るか聞くかという感覚が互いに交わり、それぞれの情報が頭にイメージされるようになるということです。 クロスモーダルは人間や鳥、魚など背骨のある脊椎動物では広く見られますが、昆虫など背骨のない無脊椎動物ではあまり知られていません。