打率.200、本塁打0…たった一人で台湾表彰式を見つめた清宮幸太郎、洗礼を成長に変える“信条”【プレミア12】
悔しい経験は成長の糧、プロ7年間の苦闘で培った信条
2012年のリトルリーグ・ワールドシリーズで「東京北砂」の一員として世界一に。2015年U-18W杯では早実高1年で代表入りし、2017年の同大会は主将を務めた。一つ一つ、世界でのステップを踏んでここまでたどり着いた選手だ。それでも、トップチームの負けられない重圧はレベルが違った。 「U-18とかもあったんですけど、トップチームは日本全国の期待を背負っていると思いますし、注目度も全然違う。その中でのプレッシャー、期待の大きさとかはすごく感じています」 台湾で行われたドミニカ共和国とのオープニングラウンド最終戦では、一塁守備で牽制球をそらす場面も。悔しさばかりがつのる今回の経験も、清宮には成長の糧にできる確信がある。プロ7年間の苦闘で培った信条だ。 「いろんな人たちを見てきて、あきらめない人に必ずチャンスは回ってくるし、そういう人が最後、チャンスをつかむのを見てきたんで。とにかく絶対にあきらめないという気持ちは強くなっています」 そんな清宮にエールを送るのが、侍ジャパンの元監督で、2019年のプレミア12で日本を世界一に導いた稲葉篤紀氏だ。2022年からの2年間、日本ハムのGMを務める一方で、試合前にはジャージー姿で清宮を指導した。今季は2軍監督として、序盤は2軍生活も味わった清宮を支えた。3年間見続けて、今季の好成績は何か変化があってのことだったのだろうか。
「やっぱり五輪もWBCも出たい」、次世代を担う一員としての期待
「なんにもないのよ。実際のところ。なんにも変わってないの。コツとか感覚を、本人が自分のものにしただけなんじゃないかな。でも、それが一番大切なこと。ようやくそこまで来たとは、言えるかもしれないね」 そして、侍ジャパンのフェーズの変化が「幸太郎には風が吹いているんじゃないかな。そういう巡り合わせを持っているんだよ」と言う。 自身が監督を務めた2019年のプレミア12を「勝たなきゃいけなかった。とにかく、勝って注目してもらうしかなかった」と振り返る。「10年間も国際大会に勝てていなかった。とにかく勝たなきゃ見てもらえない」というほどの危機感だった。2009年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)以降しばらく、世界の頂点から遠ざかった日本。ただ、プレミア12優勝から一転、2021年東京五輪、昨年春のWBCを無敗で駆け抜けた。 日本代表の立ち位置も変わってきた。稲葉氏は「もちろん勝つことは前提にあるんだけど、井端監督は後の世代につなごうとしてやっていると思うよ」と言う。侍のスキを見せない、きめ細かい野球を若い世代に引き継ぐという、さらに難しい段階に突入している。清宮も、日本野球の次世代を担う一員と期待されての選出だ。 国際大会での連勝は27で止まった。侍には2026年WBCや2028年ロス五輪が待つ。清宮は「やっぱり五輪もWBCも出たいですし、メジャーにも行ってみたいですし、まだまだ夢はたくさんあります」。初侍での苦しい経験も、必ず糧にしてみせる。プロ7年間をもがきながら駆け抜けた清宮には、それだけの強さがある。
THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori