日本のLNG調達価格は原油連動で割高 貿易赤字が膨らむ要因に
■きしむカタールとの関係 第一に、ロシアが日本の制裁への報復を行い、ロシア産LNGの供給が途絶するリスクが挙げられる。すでに、三井物産、JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)が10%出資する、ロシア北極圏のLNGプロジェクト「アークティック2」に対する米国の制裁により、日本側はアークティック2への参加を停止している。アークティック2からの年間200万トンのLNG輸入も見通しが立っていない。 第二に、長期契約についても、カタールの新規LNGプロジェクトが稼働するのは26年以降となり、それまでは国際LNG需給は恒常的に逼迫(ひっぱく)する。加えて、日本では脱炭素の流れから長期的な天然ガス火力発電需要が見通せないと判断し、東京電力と中部電力の合弁企業JERAは21年、年間550万トンのカタールとのLNG長期契約の更新を見送ったため、カタールとの関係がギクシャクしている。 第三に日本にとっての最大のLNG輸入国である豪州について、豪州国内の経済成長と天然ガス需要の増大によりLNG輸出を抑制する動きがある。また、脱炭素政策から新規LNGプロジェクトへの投資に慎重な姿勢を見せており、今後の豪州からのLNG追加調達に不透明感がある。これらの点を考慮すれば、新規の拡張工事が積極的に行われている米国のLNG輸入の強化が重要となってくる。 不安定な中東情勢が今後も続くことなどを考えれば、割安な米国の天然ガス価格と割高な国際原油価格の乖離は24年中には解消しないと考えられる。石油、天然ガスは今後も依然として重要なエネルギーであり、特に天然ガスは脱炭素への移行期のエネルギーとして重要性が増している。いかに割安なLNGを米国など地政学的に安定した国から輸入するのか、日本の資源エネルギー戦略の知恵が問われている。 (岩間剛一〈いわま・こういち〉和光大学経済経営学部教授)