日本のLNG調達価格は原油連動で割高 貿易赤字が膨らむ要因に
■欧州へ向かう米国産 LNGの安定供給を重視する日本は、LNG輸入の7~8割が原油価格連動の長期契約で、米国のヘンリーハブ渡し価格が指標のLNG輸入量は1割に満たない。米国のシェールガスを原料とした百万BTU当たりのLNG価格は、計算式に従うと「ヘンリーハブ価格1.5ドル+液化コスト2.5ドル+運賃と保険料2.5ドル=6.5ドル」だが、日本のLNG輸入価格は百万BTU当たり12ドルを超え、割高なLNG輸入を余儀なくされている。 機動的なスポット価格の安さを重視するアジアの他国と比較しても、中国、韓国、台湾のLNG価格は百万BTU当たり10ドル程度である。また、欧州諸国の天然ガス価格も暖冬による需要の減少により、今年4月時点で平年に比べ十分な在庫があるため、オランダTTF価格は百万BTU当たり9ドル程度と落ち着いている。つまり、日本の天然ガス価格は今年春の時点で世界一の高値であり、昨年の貿易赤字の大きな要因ともなっている。 米国は2023年にカタール、豪州を抜いて年産8500万トンに達する世界最大のLNG輸出国となったが、日本が安価な米国産LNGを調達するのは容易ではない。脱ロシア産天然ガスを進める欧州は米国からのLNG調達を拡大しており、米国から日本へのLNG輸出は逆に減少している。米国メキシコ湾沿いのLNG輸出基地は、パナマ運河を通るアジア諸国よりも大西洋を渡る欧州諸国のほうが地理的に近いというメリットもある。 日本のLNG調達で大きなリスクとなっているのが、ロシア産の輸入である。日本はロシアへの制裁にG7(主要7カ国)の一員として歩調を合わせるものの、LNG輸入の1割は原油価格連動のロシア産が占めており、米国産LNG輸入量の1.6倍もある。これまでの安定供給を重視する原油価格連動の割高なLNG輸入に過度に依存することは、電気料金上昇にとどまらず日本のエネルギー安全保障にもインパクトを与える。