食のプロがおすすめ! ひとりで行っても心地よい東京の店 3選
ひとり飲みをするなら居心地のよい店で、じっくりとおいしい酒と料理を味わいたい。そんな願いをかなえてくれる、とっておきの店を食のプロが教えてくれた。蕎麦から里山料理に至るまで、幅広いジャンルでひとり飲みを満喫して。 『エル・グルメNo.42』掲載 Photos:SHINTARO OKI,FUJIKO,TERUAKI KAWAKAMI
「夕星」@恵比寿
「そばや酒選びに悩む時間も、すべてが癒やし」 推薦・文/山口繭子さん 初めて「夕星」を訪れた日。SNSの拙アカには「俳優の妻夫木聡さんに〝大人って何? (某ビールブランドのCM)〟と聞かれたら、酔い潰れないこと、そしていいそば屋を知ってることと答える」と書いていた。お恥ずかしい。そんなこと言う時点で大人ではないのだけれど、ディテールの隅々まで〝粋〟が詰まった「夕星」の居心地よさに触れた日、ここでそばとお酒をひとりエンジョイできる人こそ真のフーディーであり大人ではないかと思い至った。 そばを楽しむための極上3品セット。「明日備(あそび)」はなすの揚げびたしに鴨ロース、スモークサーモンと贅沢。¥1,500
小さな店内はおしゃれだけれどおしゃれすぎず、料理長の高橋信秀さんは存在感重めのスターシェフというわけでもなく(すみません)、フランス風の木の椅子や浮世絵が掛かった壁、大正末期のランプ。けれど、それらがまとまるとがぜん「ひとりでもほっこり楽しい」と思わせる。 こぢんまりした店内は洋風の椅子なども配置した和洋折衷の個性的なインテリア。
そして一番感動するのはやはり料理。特に一見シンプルなそばが奏でるインパクト大の豊かな風味は、食べると「おぉ」と声が出てしまう。 同じそばでも挽き方で印象や味ががらりと変わるおもしろさを堪能できる「もりと粗挽き二種のせいろ」(¥1,980)と「天麩羅盛り合わせ」(¥1,760)もぜひ。
にこやかな物腰の裏でそばに人生をささげた料理人、高橋さんは言う。「そばは粉次第。気温、湿度、技術、センス、食材の質、そば打ち職人の心、そんなものをひっくるめてのデザインなんです。でも、そんなことを考えなくてもお酒と一緒に楽しめてしまうのもいいところ」 どこまでも控えめな高橋さん。しかし初回訪問時は自分の口の中に響く天ぷらの「サクサク!」というASMR(脳まで届く美味なる音)に驚き、「夕星」のクオリティを体で覚えてしまったのだった。 (上)料理長の高橋信秀さん。西荻窪のそばの名店「鞍馬」で修業した後「夕星」就任。いつか自分の手でそばを育てたいと語るほど、そばに魅了された。(下)一部のメニューでは「レザンファンギャテ」松澤直紀シェフとのコラボが実現。驚くほど日本酒と合う。「ずわい蟹肉と帆立貝のムースのテリーヌ 甲殻類のクリームソース」¥1,300。