【ネットの情報は自由であるべきか?】テレグラム創業者逮捕が示唆したこと、オンラインサービス事業者は「たんなる通信路」ではない
現代のオンラインサービス事業者の役割はもはや「たんなる通信路」ではない。その上を流れる情報についてオンラインサービス事業者にも一定の責任があるという考えが強くなってきた。
欧州が主導する規制への流れ
このオンラインサービス事業者の役割の再定義、言い換えればオンラインサービス事業者の規制に向けた議論をリードしているのは欧州である。例えば欧州においては、2024年2月からデジタルサービス法という名の法律が全面適用された。 欧州連合(EU) 内にユーザーがいるすべてのオンラインサービス事業者に対して、違法コンテンツ、偽情報などへの対応や未成年の保護措置を義務付けた。とりわけEU域内人口の10%以上が使うような検索エンジンやプラットフォームには多くの義務が課せられた。適切な措置が取られない場合は、最大で全世界年間売上の6%という巨額の罰金を課せられる。 同法は状況の把握のための、監督機関に情報提供要請の権限を認めている。既にXやTikTokが、デジタルサービス法のコンプライアンス調査に疑義が生じたということで、法的手続きの途上にある。 デジタルサービス法はいくつかの様々な工夫をして規制の実効力を高めようとしている。まずは前述のEU域内人口の10%以上が使うような検索エンジンやプラットフォームに対して厳しい規律を求めている。 2024年8月時点で、グーグルとBingの2つのサービスが検索エンジンとして、アマゾン、メタや3つのアダルトサイトなど合計13サービスがプラットフォーム規制の対象となっている(European Commission 2024“Supervision of the Designated Very Large Online Platforms and Search Engines under DSA.” 2024 )。またオンラインサービス事業者とここまで一括りにしてきたが、デジタルサービス法では、ホスティングサービス、キャッシングサービス、単なる通信路などと細かな分類を設け、それぞれに異なる規律を求めている点も先進的である。 各EU加盟国は、デジタルサービスコーディネーター(DSC)とよばれる監督機関を指定でき、このDSCが各国内において法を執行する。欧州委員会とEU加盟国政府の協業による規制を想定している。 もちろん、デジタルサービス法では、オンラインサービス事業者の責任者を逮捕する権限はなく、この法律と今回のドゥーロフの勾留に直接の関係はない。報道によれば、児童ポルノの配布、流通への関与などが、フランス当局の取り調べの目的であるからである。 しかし、デジタルサービス法は、欧州においてオンラインサービス事業者に責任あるサービス運営、具体的に言えば違法コンテンツの削除などを求めていることの証左である。フランス当局をして、ドゥーロフの身柄を押さえるという決断を後押ししたと想像する。