JR西日本「消滅危機」ローカル線ランキング、1位は大赤字!100円稼ぐのに1万1766円投入
「鉄道は自動車に比べてきめ細かな移動ニーズにお応えできない」と嘆くのがJR西日本だ。利用者が少ないローカル線の経営情報開示で、最新発表分によると、17路線・30区間合計で232.6億円もの赤字を出している。「地域のお役に立てておらず、厳しいご利用状況」「大量輸送という観点で鉄道の特性が十分に発揮できていない」と、もはや“白旗”を上げている。本稿では、鉄道の費用対効果を示す「営業係数」を基にランキングを作成した。JR西日本の苦悩と合わせて解説する。(乗り物ライター 宮武和多哉) ランキングを見る→JR西日本「消滅危機」ローカル線ランキング【17路線30線区】 ● JR西日本の赤字ローカル30区間のうち もっとも費用対効果が悪かったのは? 10月29日にJR西日本が開示した資料をもとに、同社の主にローカル線における費用対効果を示す「営業係数」のランキングを作成した。 営業係数とは、収入/営業費用×100で算出。100円の営業収入を得るのにかかる費用を示す。100なら収支は均衡、100より低いと黒字、100よりも高いと赤字だ。 なお、JR西日本は「直近3年間の平均(今回の対象期間は2021~23年度)」で算出している。『JR東日本「消滅危機」ローカル線ランキング、合計赤字は757.7億円!1位は?』で紹介した、JR東日本(23年度の年間の数値)とは基準が違う点に留意する必要がある。 今回の開示では、1日の乗客数の平均(輸送密度)が2000人未満の17路線・30区間についてのみ情報公開されている。それでは早速、JR西日本管内の「営業係数ワーストランキング」を見てみよう。加えて、営業係数以外にも着目すべき数値と、同社が抱える悩みについても解説する。
● 「中国地方の背骨」である路線が なぜ大赤字に陥っているのか? 営業係数ワースト1位は、JR芸備線の東城駅~備後落合駅間だった。営業係数は「11766」で、100円の運賃収入を得るために、1万1766円の費用をかけている状況だ。 JR芸備線は広島県と岡山県にまたがり159.1kmを走破する路線だ。ワースト5には芸備線・備後庄原駅~備中神代駅間の68.5kmが3区間に分かれて入り、備後落合駅で芸備線に接続する木次線が3位に、新見駅で乗り継げる姫新線も2位にランクインした。 この一帯は、山陽(瀬戸内海側)、山陰(日本海側)に挟まれ、「中国山地の背骨」とも呼ばれる細長いエリアである。鉄道経営が軒並み悪化している主な理由は、沿線の過疎化と、クルマ社会化による鉄道利用者の減少だ。人口が少ない山岳部では乗客は少なく、維持費用が極端にかかる状態にあり、抜本的な収支改善は難しい。 しかし、それ以外にも理由はある。芸備線は各駅からバイパス立地の商業施設や宅地が極端に離れており、駅からバスやタクシーでの移動を要する。かつ、学校や病院からも距離があり、輸送機関としての利便性が根本的に良くない。 さらに、中国山地の背骨エリアは、すでに高速道路(中国自動車道)が貫通しているため、広島市からの移動はクルマや高速バスの方が速い。都市間移動と生活移動、どちらにも利用されなくなっており、営業成績が極端に低迷している。