【ネットの情報は自由であるべきか?】テレグラム創業者逮捕が示唆したこと、オンラインサービス事業者は「たんなる通信路」ではない
テレグラムの創業者であるパベル・ドゥーロフが経由地として訪れたフランスの空港で、フランス当局によって逮捕された。本稿執筆時点で、保釈金を支払い保釈されているとのことであるが、フランス国外には出ることはできず、囚われの身にある。 テレグラムとは世界中で使われるメッセージングアプリである。2013年にパベルとニコライのドゥーロフ兄弟が立ち上げた。 特徴はシークレットチャットとよばれる機能を使うと、管理者ですらユーザーのメッセージを読むことができないという秘匿性の高さにある。その秘匿性の高さ故に、反政府活動家や人権団体などはもちろんのこと、テロリストや犯罪者が好んで使う。 フランス当局は、テレグラムを使った児童ポルノの拡散などの疑いで、ドゥーロフの取り調べを行っているとのことである(パリ司法宮 2024)。
テレグラム側は自信失わずも、変わる世界の評価
フランスに留め置かれているとはいえドゥーロフは意気軒昂である。勾留後もテレグラムを用いて、自らが透明性確保のために最大限努力してきたこと、逮捕が不当であることを、アピールすることに余念がない。 とりわけ「テレグラムが特定の国の政府にとって許容できないものなのであれば、その国において使用を禁止すれば良い。テレグラムはそうやって過去にロシアを捨てたし、(フランスから)追放されたらそれを受け入れる準備はあった」とのコメントは、ドゥーロフの本音ではないだろうか。フランス政府が、フランス国内でのテレグラムの使用を禁止するのではなく、自身の身柄を勾留するという手段を選ぶことを想定していなかったようである。 この件についての周囲の受け止めは多様である。ロシア政府は「慎重な捜査を求める」 とコメントし、加えてドゥーロフへの領事面会を希望している。対して、フランスのマクロン大統領は、これがあくまでフランスの捜査当局が主導するものであり、政治的な意図がないことを強調する。 X(旧ツイッター)を経営するイーロン・マスクや、エドワード・スノーデンらは、今回の勾留がオンラインでの表現の自由を傷つけるとして明確な抗議の声を上げた。ただドゥーロフを擁護する声は少ない。