ドルは9年ぶり大幅高に、米利下げ観測後退や関税強化見通しが追い風
(ブルームバーグ): ドルは年間でほぼ10年ぶりの大幅高となりそうだ。米景気の強さが米利下げ観測を抑え、トランプ次期大統領が関税引き上げを警告する中、ドル買いが続いている。
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は年初から7%余り上昇。2015年以来最大の値上がりとなっている。先進国通貨は全て対ドルで下落した。
バークレイズの通貨ストラテジスト、スカイラー・モンゴメリー・コーニング氏は「ドルを今年支えてきた大きな柱は、景気の強さだ」と指摘。「これは米金融当局が浅い利下げサイクルを形成しつつあることを意味する。米金利が他国・地域よりも高い水準にとどまり、歴史的なドルの高バリュエーションが続く一助になっている」と述べた。
ブルームバーグのドル指数は今月、約2年ぶりの高値に達した。米連邦公開市場委員会(FOMC)が利下げを実施したものの、金融緩和ペースの減速を示唆したことが背景にある。ドルは2025年に一段高となる余地があるとウォール街ではみられているが、世界の経済成長が来年に改善し、他通貨を支える一方で、ドルを圧迫する可能性もある。
10カ国・地域(G10)通貨では今年、円やノルウェー・クローネ、ニュージーランド・ドルの下げが目立った。12月27日時点でいずれも米ドルに対して10%余り下落している。ユーロは約5.5%安の1ユーロ=1.04ドル近辺で推移。来年にはドルとパリティー(等価)になるリスクを見込むストラテジストが増えている。
投機筋は米選挙前と選挙以降、ドルに強気なポジションを着実に増やしており、将来のドル高に連動する契約を282億ドル(約4兆4500億円)相当保有。これは5月以来の高水準だ。
カマクシャ・トリベディ氏らゴールドマン・サックスのアナリストは「足元のドル高基調は経済データと整合的で、市場は当社の関税見通しを十分には織り込んでいない。われわれの予想に対するリスクは、まだ中期的に上方向だ」と20日のリポートで指摘。「特に、保護主義的な措置の強化にもかかわらず、堅調なセンチメントが米成長の持続性につながる場合はなおさらだ」と記した。