LINEを使った配車サービス、「Uber」「GO」より便利? 実態は電話予約の進化版、高齢者にも親切だった?
増加で乱立の懸念
大阪メトログループのオンデマンドバスに関して、もうひとつ重要な点がある。 それは、外国人観光客の需要が高いと見込まれる地域に多数の停留所を設置しているにもかかわらず、e METROアプリ以外のプラットホームとしてLINEしか提供されていないという点だ。 海外で最も普及しているメッセージアプリはWhatsApp(米国)であり、日本ではあまりなじみがない。LINEが広く利用されている国は、日本を除けば台湾とタイのみであり、大阪を訪れる外国人観光客がオンデマンドバス利用のためだけにLINEをダウンロードするのは現実的ではない。 また、キャッシュレス決済に対応していないという課題もあり、大阪メトログループのLINEミニアプリは観光客にとって便利な選択肢とはいい難い。現時点では、大阪市内に点在する停留所を十分に活用できていないという問題がある。 ここで押さえておくべき重要な点は、これらのサービスがLINEの統合プラットホームで提供されているわけではなく、 「各事業者が独自に展開している」 ということだ。例えば、MITTのLINEミニアプリでは、大阪メトログループのオンデマンドバスを手配することはできない。 地方都市の交通事業者にとって、LINEミニアプリは開発が簡便なプラットホームであるため、今後LINEミニアプリの乱立が予想され、利用者に誤解を招く可能性がある。 なお、LINEが提供していたタクシー配車サービス「LINEタクシー」は、2018年にサービスを終了している。
サービスの限界と可能性
LINEを活用した配車サービスは、いってしまえば 「電話配車の上位互換」 である。普段使用している連絡ツールをそのまま利用できるため、LINEは「現代の電話回線」としての役割を果たしている。 この利便性により、従来、電話でタクシーを呼ぶだけだったユーザーにも新たな体験を提供することが可能となる。特に、高齢者の多い地域で展開される日本版ライドシェアやデマンド型バスサービスとの相性がよいと考えられる。 ただし、LINEの使いやすさだけで、UberやGO、DiDiなどの大手配車アプリを完全に上回ることは現状では難しい。特に、キャッシュレス決済やポイントシステムの活用においては、大手配車アプリが依然として優位に立っている。 今後、新しい交通システムが進展するなかで、LINEの利便性よりも、より多様なキャッシュレス決済に対応できる大手アプリに有利な状況が整う可能性がある。 そのため、LINEミニアプリを導入する事業者は、今後のアップデートや機能追加を見据えた戦略的な計画を立てることが求められるだろう。
澤田真一(ライター)