「さすがに消極的すぎ」絶好調に見えた脇本雄太 大敗の背景を帝王・山田裕仁氏が推察/熊本競輪G3・決勝回顧
地元・熊本勢は新旧エースが決勝進出
地元・熊本勢では、中川誠一郎選手(85期=熊本・45歳)と嘉永泰斗選手(113期=熊本・26歳)が勝ち上がり。中川選手は、2022年7月の佐世保以来となるGIII優出です。番組や前を任せた選手に助けられた面があったとはいえ、初日から1着、2着、1着という結果で決勝戦に駒を進めてきたのですから、地元ファンは大盛り上がりだったことでしょう。決勝戦は、嘉永選手が前で中川選手が番手という並びです。 3名が勝ち上がった中国勢の先頭は、町田太我選手(117期=広島・24歳)。オール2着で駒を進めてきたわけですが、主導権を奪って粘り抜いた内容は本当に素晴らしかった。デキだけならば、全出場選手のなかでも一番でしょう。番手は、二次予選と準決勝でも町田選手と連係していた松浦選手。ライン3番手を、隅田洋介選手(107期=岡山・37歳)が固めるという布陣です。 深谷選手は、阿部拓真選手(107期=宮城・33歳)と即席コンビを結成。阿部選手も、勝ち上がりの過程で調子のよさが感じられた選手のひとりです。こちらは当然、深谷選手が前で、阿部選手が後ろという隊列に。そして単騎で勝負するのが、脇本選手と坂井洋選手(115期=栃木・29歳)の2名で、いずれも強力なタテ脚があるのは言うまでもありません。問題は、単騎でこの相手にどう立ち回るかでしょう。 車番に恵まれた中国勢は、前受けからの突っ張り先行を目論むはず。先頭を任された町田選手が絶好調モードで、その後ろを回る松浦選手と隅田選手も自力がありますから、ここをすんなり先行させてしまうと手も足も出ないで終わってしまう可能性があります。それを阻むために、他のラインはどのような戦略や戦術をもって臨んでくるのか。それでは、決勝戦の回顧に入っていきましょう。
決勝は中国勢の前受けでスタート
レース開始を告げる号砲と同時に、1番車の松浦選手と2番車の深谷選手、6番車の中川選手が飛び出しました。ここは最内の松浦選手がスタートを取って、中国勢の前受けが決まります。深谷選手は4番手からで、6番手に単騎の坂井選手。地元・熊本の嘉永選手は後方7番手で、最後方に脇本選手というのが初手の並びです。おおむね、レース前に想定されたとおりの隊列ですね。 後方の嘉永選手が動いたのは、青板周回(残り3周)の2センターから。先頭を抑えにいくのではなく、明確に「斬る」という意志を感じるスピードで、先頭の町田選手に迫っていきます。赤板(残り2周)を通過したところで嘉永選手が前に出ると、町田選手は無理せずいったん3番手に引きますが、打鐘前の2コーナーを回ってから加速。先頭に立った嘉永選手を、すかさず叩きにいきます。