「さすがに消極的すぎ」絶好調に見えた脇本雄太 大敗の背景を帝王・山田裕仁氏が推察/熊本競輪G3・決勝回顧
松浦選手の外から並んだ深谷選手は、ゴール直前にもうひと伸び。松浦選手を捲りきったとハッキリわかる態勢で、ゴールラインを駆け抜けました。ゴール後には、力強いガッツポーズも飛び出した深谷選手。これが今年2回目、通算では21回目となるGIII勝利で、節目となる400勝も達成しましたね。2着は松浦選手で、3着は隅田選手。逃げた町田選手が4着と、中国勢にとっては悔しい結果となりました。 レースを終始リードしていたのは中国勢で、赤板過ぎに嘉永選手をいったんは前に出すも、すかさず叩いて主導権を奪いきることに成功。町田選手の逃げは力強く、かなりかかっていました。そこを「このままではまずい」と坂井選手が果敢に単騎捲りにいったことで、レースが動いた。タラレバになりますが、坂井選手の動き出しがもっと遅かったならば、中国勢が上位を独占していたかもしれません。
深谷は伸びるコース把握していた
この坂井選手の動きを利して、さらに脇本選手の仕掛けも待って仕掛けた、今回の深谷選手。もっとも伸びるイエローライン付近を通っての捲りも、それを把握した上でやっていたと思いますよ。最後の直線では、マークする阿部選手のほうが突き放されるという素晴らしい伸び。熊本の復興を早くから支援してきた深谷選手の優勝は、地元ファンにとっても喜ばしいものだったでしょうね。 坂井選手に続いて仕掛けた地元・熊本勢も、存在感を大いに発揮。いい結果こそ出せませんでしたが、町田選手に突っ張らせないスピードで前を斬ったのはお見事で、最終バックで仕掛けてからも、嘉永選手は前との差をジリジリと詰めていました。とはいえ、本当にいい頃ならば、あそこでもっと前に迫れていたはず。夏に病気欠場した影響か、嘉永選手のデキは復調途上といったところでしょうから。
単騎の脇本は「さすがに消極的すぎ」
エキサイティングで文句なしに面白い決勝戦となりましたが、それだけに残念だったのが、脇本選手の走りです。後方に置かれる展開での捲り不発があると考えてはいましたが、「それでもこのデキの脇本選手ならば」と信じて、ここから勝負したファンは多かったはず。好調な機動型が多いなかでの単騎戦という難しさがあったとはいえ… さすがにあれは消極的すぎました。 結果論にはなりますが、前にいた坂井選手が仕掛けたときに、連動してついていくのがベストだったでしょうね。坂井選手にスピードをもらっての仕掛けであれば、優勝できた可能性は十分あるはず。あとは、「坂井選手がやったレースを自分がやる」という選択肢もあった。勝てたかどうかはともかく、町田選手を捲りきって先頭に出るところまでは、今回のデキならば確実にいけたと思います。 しかし、脇本選手は強気にいけずに「待って」しまった。その理由を簡潔にいうならば、この手で優勝できるという自信を持てなかったからでしょう。実際、町田選手を捲りきって先頭に立った後、そのままゴールまで押し切れるかどうかは微妙なところ。守ってくれる味方のいない単騎であることや、松浦選手が切り替えてきそうなこと、後から深谷選手の鋭い捲りが飛んでくることなど、立ちはだかる壁は高いですからね。