北海道新幹線「開業延期」で迷走する並行在来線 住民の意見を無視し、道はバス転換にこだわる
■大勢の客が殺到し、倶知安町の主張は破綻 新幹線新駅の建設が進む倶知安町では、新幹線新駅の整備に支障をきたすということを理由に、函館本線長万部―倶知安―小樽間の2025年での廃止を主張している。しかし、特に2023~2024年の冬の観光シーズンにかけては倶知安―小樽間ではインバウンド旅行者を含めた大勢の観光客で激しい混雑となり、途中の余市駅では乗客が列車に乗り切れなくなる積み残しが発生したことから、2月に入りJR北海道では日中に運行される2両編成のH100形気動車から3両編成のキハ201形気動車に車両を置き換えて運行を行っているなど、バスではさばき切れないほどの利用者がいる現状では倶知安町の主張は完全に破綻している。ある関係者は「倶知安町の廃止前倒しの主張については、道庁から2022年6月頃まで倶知安町に出向してきた参事クラスの職員が計画をまとめていたようだ」と証言する。
北海道交通政策局並行在来線担当課長の小林達也氏によれば、北海道中央バスなどバス会社と鉄道代替バスの相談を始めたのは、廃止の方針を決めてから1年以上経った「2023年5月になってから」であること。さらに、鉄道の維持については「財政的な負担」であるという認識を示し、道の仕事のずさんさと政策姿勢を浮き彫りにした。 こうした道の政策方針を受けてか、各地で行われた並行在来線の住民説明会では行政側は住民に対して問題ある対応を繰り返していたようだ。蘭越町の住民説明会に参加した町民の女性は「『鉄道を残すと住民の負担が増えることになる』と半ば住民に対する恫喝ともいえるような態度を示され、異論を唱える余地すら与えられなかった」と不満を漏らす。
福島県の只見線のケースなど、ローカル鉄道であってもその活用次第では、地域外から大勢の観光客を呼び込むことができ、地域に対してその赤字額を十分に上回る経済効果が発揮できるという事例が増え始めている。しかし、道の政策姿勢は目先のコストカットのみにしか意識がなく、地域に対する総合的な影響を考える能力が欠如しており、新幹線開業の経済効果を、並行在来線を活用することで地域に波及させようという発想は微塵もない。