『源氏物語』年上の愛人・六条御息所をなおざりに扱う光源氏を桐壺院が厳しく注意。その忠告に見る<男女関係の実態>と<紫式部のメッセージ>とは
◆平安貴族社会の男女関係 芸術、文化は当然のこと、男性社会での権力関係にも通じた政治力や、明晰な判断力も求められます。 一方、女性の側も、身分や家柄に応じた帝からの愛情を受け入れ、互いの立場を思いやることを、美徳としました。 もっともこれは、あくまで理想の話であって、男性・女性のいずれにしても、愛する人にとって、あくまでただ一人の女性、ただ一人の男性でありたいと思うのは当然でしょう。 帝はそれが許されない立場だったのですが、そのような後宮の男女関係が、源氏のような臣下や、男性貴族社会にも広がっていたわけです。
◆難しい父の教え 桐壺院が源氏に諭した、交際する女性の面目をつぶすことなく、どなたをも大切にしなさいという忠告は、誰もが等しく愛し合うべきだとする博愛主義とは異なります。 それだけにかえって難しい教えだともいえますが、複数の女性との関係を穏やかに保ちたいのなら、一人ひとりの女性への配慮は、最低限の礼儀だと述べているのです。 源氏はこのとき、六条御息所と正妻葵(あおい)の上との関係に苦慮していました。 源氏は難しい父の教えを、守ることができるでしょうか。 ※本稿は、『美しい原文で読む-源氏物語の恋のことば100』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
松井健児
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