マテシッツの死後、レッドブルの経営は“複数人に責任を分散する”体制に「ひとりの人間では置き換えられない」とマルコ
レッドブルのモータースポーツコンサルタントを務めるヘルムート・マルコは、レッドブルの共同創設者ディートリッヒ・マテシッツの死去から約2年が経過し、同社の経営体制に大きな進化があったことを明らかにした。 【写真】ディートリッヒ・マテシッツ(レッドブルオーナー)とマックス・フェルスタッペン オーストリア人起業家の故マテシッツは、有力なF1チームだけでなく、サッカー、サイクリング、エクストリームスポーツへのベンチャーを含む世界的なスポーツ帝国を残した。マテシッツは独裁的な人物であり、先見の明とリスクをいとわない姿勢を反映した、迅速かつ大胆な決断を下すことで知られていたが、彼の死去を受けて同社の経営陣は再編され、複数の人物に責任が分散されて、前リーダーの迅速で決断力のある経営スタイルからの転換を図った。 マテシッツの長年の親友であるマルコは、『ORF』のインタビューでこの変化について振り返った。 「ディートリッヒ・マテシッツの死は、もちろん変化をもたらした」とマルコは説明した。 「彼は独裁者で、決断はすぐに下された。彼は確かなビジョンを持ち、リスクを恐れないカリスマ的な起業家だった」 「現在、組織内のすべてが再編されており、マテシッツのような人物を見つけることは不可能だ。結果として、彼をたったひとりの人間で置き換えることもできない」 マテシッツの死後、オリバー・ミンツラフがレッドブル組織の新マネージング・ディレクターに任命され、F1を含む同社のスポーツ事業の幅広い範囲を監督することになった。しかしレッドブル・レーシングの運営管理は、長年にわたってチームを驚異的な成功に導いてきたクリスチャン・ホーナー代表の手にしっかりと握られていることをマルコは強調した。 「体制の面では、オリバー・ミンツラフがF1を担当している。彼はサッカーやサイクリングなど、他のいろいろなことも担当している」 「運営面ではクリスチャン・ホーナーが責任を負っている。体制が拡大しているため、最終的な詳細はまだ確定していないと言える」 今年初め、不適切な行為を受けたとしてホーナーに対する告発がなされたことにより、レッドブルで不和が生じた。この論争はチーム内の軋轢を招き、マックス・フェルスタッペンの父であるヨス・フェルスタッペンは、ホーナーが指揮を執り続けるとチーム内部の力学が混乱すると予測し、レッドブルが連勝を続けることができるか否かについて懸念を表明した。 マルコは、ヨス・フェルスタッペンが発した言葉は、あのような重要な時期にチームが結束する役には立たなかったと述べた。 「言ってみれば、それは役に立たなかった」 「しかし、内部で我々はともに話し合いの席につき、こう言った。『この世界選手権で勝利を飾るには、あらゆる分野で力を合わせ、協力しなければならない』とね。将来のためにもそうだ。ふたたび勝てるマシンを持つためだ」 直近のシーズン以降、マックス・フェルスタッペンをレッドブルに引き留めておくという問題もある。フェルスタッペンはレッドブルのマシンに競争力を感じなくなった場合、他チームに移る可能性がある。マルコはこの可能性を認め、レッドブルはフェルスタッペンが他の選択肢を検討しないようにするために、レースに勝てるマシンを継続的に提供する必要があると指摘した。 「マックス・フェルスタッペンに勝てるマシンを与えない場合、長期的にトップドライバーの契約にはすべてパフォーマンス関連の離脱条項が含まれているから、マックスがまだ楽しんでいれば、他に目を向けることは明らかだ」とマルコは語った。 「それは影響のあるもうひとつの要素だ。彼は常に最高のパッケージが提供されている場所でドライブするだろう」 レッドブルが新たな章に入るなか、経営陣は継続性と適応性のバランスを取り、マテシッツの非凡なビジョンがなくてもチームの成功が続くよう努めている。F1チームの構造と将来の方向性に関する決定は依然として流動的だが、焦点は明確だ。勝ち続けること、そしてマックス・フェルスタッペンをチーム運営の中心に据えることだ。 [オートスポーツweb 2024年10月11日]