海外メディアも「さらに世論反発を招く」と批判…火消しどころか森会長の謝罪会見は東京五輪開催への”逆風”
会見の最後に「今回の発言にみなさんが怒っていて、森さんの五輪を見たくないという声もネットにある。どう受け止めますか」と聞かれると、「いやだから謙虚に受け止めております。だから撤回させていただきますと言っているんです」と、とても謙虚に受け止めている人とは思えぬ態度で会見を締めくくった。 おそらく森会長は“加害者”であるのに、揚げ足を取られメディアに虐められているという“被害者意識”が強いのだろう。もう思考回路が凝り固まってしまっている。過去に失言を繰り返してきたことがそのことを如実に示している。本来ならば周囲が影響力の大きい森会長の発言をマネジメントすべきだが、首相経験者をコントロールしきれないのだろう。オリンピック憲章にある「いかなる種類の差別も受けることなく確実に享受されなければならない」「男女平等の原則を実践するためあらゆるレベルと組織においてスポーツにおける女性の地位向上を促進し支援する」などの精神は、基本的人権を尊重するという民主主義の原則でもある。 だが、森会長は憲章に反した行為を反省することより、そのミスをクローズアップしたマスコミへの敵対心が上回ってしまう。五輪というビッグイベントを成功させるために関係各所の意見を集約して調整する政治力はあるが、東京五輪のトップとしての自覚に欠ける。つまり、その立場にいる資格はない。 先日、森会長は是非論で揺れる五輪開催のカギを「世論」としていたが、自らの発言と、その火消しの失敗が一部の調査で80%が反対と出た「世論」にさらなる「逆風」を吹かせてしまうことになった。新型コロナの感染拡大のニュースより深刻な「オウンゴール」である。 海外メディアも森会長の謝罪会見を否定的に報じた。 オーストラリアのABCニュースは「東京五輪のボスが女性たちが会議で話し過ぎると発言した後に辞任を拒否」との見出しを取り、「彼は、自らの発言がオリンピック精神とかけ離れていたと語った」と謝罪会見について触れた。 記事は「森氏の発言はSNSで反発を呼び、木曜日朝に日本では『森喜朗氏は引退してください』のハッシュタグがトレンドとなった」と日本の社会的反響について触れ、「森氏の発言に対する怒りは、新型コロナ感染の中で五輪を開催しようとすることに慎重な意見が増えている日本の世論のさらなる反発を招く可能性がある。最近の世論調査では、日本の8割近くが7月に予定通り五輪大会を開催することに反対している」と、女性蔑視発言と、謝罪会見が「世論」をさらに開催反対へ導く可能性があることを示唆した。 米国のCBSニュースは「女性たちを『困る』とした性差別発言が、五輪開催の準備ができていることを示そうとする日本の努力を台無しにする」との見出しを取り、「日本とIOCの職員たちが夏季五輪を開催するために細心の注意を払っている時に東京五輪のトップが性差別発言で謝罪を余儀なくされた」と伝えた。 「森氏は木曜日、女性たちは話が多く女性理事が増えることで『会議に時間がかかる』と言及したことを謝罪したが、夏季五輪のかじ取り役から降りる要求は拒絶した」と辞任を否定したことに注目。IOCが「男女平等は組織における『基本原則』で組織のリーダーシップにおける男性と女性の大きな人数差は近年減少を見せている」との声明を出し、その声明の中で森会長の謝罪で「IOCはこの問題は終わったと考えている」とコメントしていることを紹介した。 その上で「この新しい否定的な出来事は、新型コロナに関する懸念から森氏のチームとIOCが国の内外から五輪中止のプレッシャーを受けている時期にもたらされた」と、開催へ”逆風”になることを指摘した。