【このニュースって何?】まもなく東京都知事選 → なぜ東京は区と市が別なの?
日々のニュースの中に「学び」のきっかけがあります。新聞を読みながら、テレビを見ながら、食卓やリビングでどう話しかけたら、わが子の知的好奇心にスイッチが入るでしょうか。ジャーナリストの一色清さんがヒントを教えます。
東京には特別区がある
7月7日に投開票が行われる東京都知事選の選挙運動がたけなわです。新聞やテレビでもその様子が連日とりあげられています。東京都には日本の人口の1割以上の1400万を超える人が住んでいます。皇居や国会があるのをはじめ、大企業の本社や大学やメディアなども集まっていて、誰もが認める日本の中心です。そのトップを決める選挙なので大きな注目を集めるのは当然だと思います。 ただ、ここで選挙戦について解説しようというわけではありません。全国には47都道府県がありますが、東京都だけがほかの道府県とは違う自治の仕組みをとっていることについて考えてみたいと思います。 東京都の自治の仕組みがほかの道府県と大きく違う点は、東京都には特別区があることです。東京都以外の道府県は市と町と村で構成されています。東京都にも26の市と5の町と8の村がありますが、そのほかに23の区があります。 たとえば、道府県では中心となる市に道府県庁が置かれていますが、都庁は東京都新宿区にあります。新宿区は市の下にあるのではなく、市とは無関係に独立した存在です。 新宿区のような東京の区は特別区と呼ばれます。特別区は東京にしかありません。日本には「政令で指定する人口50万人以上の都市」である政令指定都市が20市あります。横浜市や大阪市のような人口の多い市が指定されていて、こうした政令指定都市にも区があります。しかし、その区は行政区と呼ばれ、あくまで市から委託された一部の行政をおこなっているのにすぎません。地名としては、横浜市戸塚区のように区は市の下に位置付けられます。 東京都の特別区は行政区ではなく、市と同じような存在です。区長や区議会議員は基本的に選挙で選ばれます。区独自の条例を制定することや区独自の税金を区民に課すこともできます。 ただ、上下水道や消防は広域でおこなうほうがいいので都の仕事になります。また、財政の均衡を図るため23区で財政の調整がおこなわれることになっているので、自主財源で何でもできるというわけではありません。しかし、行政区とはまったくちがう市に近い権限を持っているのは確かです。