冠水時の避難に長靴は要注意、その理由とは? 水害に備えておきたい基礎知識
――水平避難で冠水した道路を歩くことを余儀なくされた場合、どんな靴が適しているのでしょうか。 高荷さん: 冠水した道路を通って避難するのはできるだけ最後の手段にしてほしいのですが、どうしても冠水した場所を歩いて避難しなければならない場合もあるでしょう 水深が浅い場所であれば、一般的な長靴でも十分です。ただ、膝よりも水深が深い場所を歩く場合、長靴の中に水などが入って脱げてしまう可能性もあります。最適なのは、ヒモで縛ることができるぴったりとした長靴です。
また、スニーカーのようなヒモ靴は足を守る面積が小さいため、登山靴やアウトドアで使用するようなハイカットの靴など、できるだけ広く足を守ることのできる靴があれば選択してください。靴底が頑丈で、滑りにくいため、水中でも歩きやすく脱げづらいでしょう。どうせ濡れるからといってサンダルなど素足が露出してしまう靴は絶対NGです。水の中にどんな危険物が流れているかわかりませんし、けがをする可能性もあります。 ――冠水した道路を歩くときに注意しておきたいポイントも伺いたいです。 高荷さん: 水が濁っている場合、冠水した道路では足元が見えません。そのため、注意しなければならないのは、足元に穴や転落するスペースがあるかもしれないということ。例えば、下水が氾濫してマンホールのふたが外れてしまっていることもあります。マンホールにもし落下してしまえば助かりません。側溝や用水路なども要注意です。
冠水した道路を歩かなければならない場合は、何かしらの棒状のものを使って足元を確認しながら歩いてほしいです。ご自宅にある傘、バット、ゴルフクラブ、物干し竿など、棒状のものなら何でもかまいません。それらを使って穴や側溝、障害物や危険物が無いか確認しながらゆっくりと避難をしてください。ご家族など複数人で移動するのであれば、一人ずつ棒状のものを持って、できるだけ直線上に並び、先頭を歩く人が見つけた安全な場所を通っていくとよいでしょう。 あわせて注意しなければならないのは、危険物です。冠水していると水中に何が落ちているかわかりません。がれきや割れたガラス、くぎやネジなどを万が一踏んでしまったら大けがにつながってしまいます。あらかじめ避難用の靴の中にセーフティインソール(踏み抜き防止インソール)のような頑丈なインソールを入れておいていただきたいです。ホームセンターやネットショッピングでも購入可能なので、家族全員の避難用の靴に入れておくとよいでしょう。 また、冠水した水は非常に不衛生です。特に大雨で下水が氾濫した場合は、生活排水がそのまま街の中に流れ出ている可能性があります。避難の途中でけがをしてその水に触れた場合、破傷風などの感染症にかかってしまう恐れも。極力足を水中にさらさないことが重要です。レインパンツがベストですが、無ければ足全体を覆える長ズボンを履いて避難するようにしましょう。 ----- 高荷智也(※「高」ははしご高) ソナエルワークス代表。「備え・防災は日本のライフスタイル」をテーマに活動する、備え・防災アドバイザー。家庭の地震対策から企業での感染症対策など「死なない」防災を真剣に楽しくアプローチ。 文:大井あゆみ 制作協力:Viibar