実は閉経前後に上がる「乳がんリスク」!検査すれば確実に発見できるの?【更年期女性の医療知識アップデート講座】
乳がんのリスクが高い人は?
自分が乳がんにかかりやすい(リスクが高い)かどうか、を知りたいところ。残念ながら、乳がんの原因ははっきりとはわかっていないが、乳がんの原因のひとつに、女性ホルモンのエストロゲンの影響があるといわれている。 「食生活の欧米化に伴い、高タンパク・高脂肪の食事が増え、日本人女性の体格がよくなり、初潮年齢が早くなりました。さらに女性の社会進出により、初産年齢が上がり、出産回数が減少しています。すると、妊娠しない期間に卵巣から分泌されるエストロゲンが乳腺を刺激することにより、乳がんリスクが上がると考えられています。 また、遺伝性、家族性の乳がんもあります。血縁者に乳がんや卵巣がんにかかった人がいる場合はリスクが高いといえると思います」 【乳がんのリスク因子】 □ 血縁者(特に母、姉妹)に乳がんの人がいる □ 乳がんにかかったことがある □ 高濃度乳房である □ 初潮が早かった(12歳未満) □ 年齢が40歳以上 □ 出産経験がない、あるいは初産が30歳以降、授乳経験がない □ 閉経年齢が55歳以上 □ 閉経後、肥満した □ エストロゲンを含む経口避妊薬、閉経後の長期のホルモン補充療法 □ 乳房の病気(乳腺炎など)になったことがある □ 子宮体がん、卵巣がんにかかったことがある □ 飲酒 □ 喫煙 □ 運動不足 □ 糖尿病 リスクが高い(ハイリスク)と考えられる人は、血縁に乳がん、卵巣がんの人がいる、「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」の人。中間リスク(ミドルリスク)には、乳がんにかかったことがある方、高濃度乳房の人もミドルリスクと考えられる。また、上記のリスク因子にたくさん当てはまる方もミドルリスクと考えてもよいかもしれない。 ハイリスクのHBOCの人の検診は、MRI検診が行われるようになっている。詳しくは次回お伝えする。ミドルリスクの乳がん経験者の人や高濃度乳房の人は、年1回のマンモグラフィと超音波検査を行ったほうがよいだろう。 今、日本人女性の乳がんは、40歳から増え始め、60代がピークになっている。乳がんにかかる人が、働き盛りで家族や社会に頼りにされる忙しい年代の40代後半から増えているのは、日本の特徴だ。 特に閉経前の女性は、高濃度乳房の人の割合が多いことが予測される。検診では高濃度乳房かどうかを見極めて、マンモグラフィに超音波を組み合わせて受けることを考えてみてもよいだろう。乳がん経験者の私は、年1回、マンモグラフィと超音波検査を合わせて行っている。 このように、今後の乳がん検診は、一人一人のリスクに合わせて検診方法を変えて行う「リスク層別化検診」に向かうべきとする専門家もいる。 欧米では、乳がんで亡くなる人の割合(死亡率)は減って来ている。しかし日本では乳がんにかかる人の割合(罹患率)が増えているだけでなく、亡くなる人の割合(死亡率)もいまだに増加しているのだ(国立がん研究センター がん情報サービス 2019年データ)。