実は閉経前後に上がる「乳がんリスク」!検査すれば確実に発見できるの?【更年期女性の医療知識アップデート講座】
高濃度乳房(デンスブレスト)だったら、どうする?
日本人女性の40~70%に『高濃度乳房(デンスブレスト)』と呼ばれる乳房タイプが見られる。マンモグラフィでは、脂肪組織が黒く、乳腺組織やしこりが白く写る。そのため、乳腺が多いタイプの乳房では、しこりがあっても白く写るため、しこりの発見が難しくなる。これはまるで、雪原の中で白いウサギを探すようだと表現される。 高濃度乳房の人は、マンモグラフィでは乳がんが見つかりにくいため、精密検査が必要とされる割合が高い傾向にある。 また、特に閉経後の高濃度乳房では、脂肪性乳房と比べて乳がん発症リスクが約3倍高く、肥満の高濃度乳房の人ではそのリスクが約12倍に上るという、日本人女性を対象とした研究結果も発表されている*1。 *1 Keiko Nishiyama, Narut oTaira, Taeko Mizoo, et al. Influence of breast density on breast cancer risk: a case control study in Japanese women. Breast Cancer. 2020;27(2):277–83.
【マンモグラフィでは、がんを見つけにくい「高濃度乳房」】 医師は、マンモグラフィの画像を4分類に分けて判定。右ふたつがアジア人に多い「高濃度乳房」で、がんがあっても見えにくいタイプ。欧米人に多い「脂肪性乳房」は乳腺が少なく、がんが見つけやすいタイプ。
高濃度乳房の人は、マンモに超音波を組み合わせる検診を!
では、もしマンモグラフィ検診で高濃度乳房とわかったら、どうしたらいいのだろうか? J-STARTという日本人女性を対象とした乳がん検診の検証試験の中間報告では、40代女性において、マンモグラフィに超音波検査を組み合わせることで、乳がんの発見率が約70%~約93%に向上したことが報告された*2。 *2 Noriaki Ohuchi,Akihiko Suzuki,et al. for the J-START investigator groups. Sensitivity and specificity of mammography and adjunctive ultrasonography to screen for breast cancer in the Japan Strategic Anti-cancer Randomized Trial (J-START): a randomised controlled trial. the Lancet 5th november;2015 現在、この研究ではさらに長期的な観察を通じて、マンモグラフィと超音波検査を組み合わせることによって、乳がんの死亡率を低減できるかどうかの最終的な検証が進められている。 「この結果から、40代の女性はマンモグラフィに超音波検査を組み合わせたほうが、乳がんの発見率が上がることがわかります。 また、乳房のタイプ(高濃度乳房かどうか)は年齢とともに変化します。特に、閉経後しばらくすると、若い頃に高濃度乳房だった人でも、脂肪性乳房に変わることがあります。脂肪性の乳房では、マンモグラフィでしこりがよく見えるため、定期的にマンモグラフィ検診を受けることが重要です」