宇都宮LRT、「キーパーソン」が明かした成功の鍵 インパクトある外観、「マイカーに負けない内装」とは?
続いて壇上に立ったのは宇都宮ライトレールの中尾正俊常務取締役である。中尾常務は広島電鉄出身。長年にわたり路面軌道事業にかかわった経験を買われ招聘された。まず行ったのは運転士、技術者、労務・管理・人事などの事務職員など合わせて約100人の人材確保。とりわけ苦労したのが運転士である。 鉄道の運転免許証を持っている人は20人ほどいたが、路面電車の運転免許証を持っている人が少ないのである。そこで、中尾氏の人脈を駆使して、全国の路面電車を運営する鉄道会社8社に社員を派遣して6カ月の座学と運転訓練を受けてもらった。
また、運転部と技術部の両部長職は未経験者には務まらないため、運転部長は函館市企業局交通部から、技術部長は長崎電気軌道からスカウトしてきてもらったという。「将棋の飛車と角がそろったようなもので、これで運行や保安についてはやっていけると確信した」と中尾常務が振り返る。 ■デザインはマイカー利用者を意識 最後に壇上に立ったのは、実際にデザインを手がけたGK設計の入江寿彦取締役である。GKグループはこれまでに大阪万博のモノレール、横浜市高速鉄道、広島アストラムライン、多摩都市モノレール、富山ライトレールなど数々の公共交通デザインの実績を持つ。
入江氏からはライトラインのトータルデザインコンセプトが詳細に説明された。デザインコンセプトは「雷都を未来へ」。古来、宇都宮は雷が多く、「雷都」と呼ばれてきた。一般的に雷は危険なイメージがつきまとうが、宇都宮では雷が落ちた田は豊作になるといわれており、雷は稲の実りをもたらす恵みの象徴だったという。「雷の放電により空気中の窒素が酸素と結びつき、窒素化合物となり、これが雨に溶けて降り注ぐと、稲の肥料となり成長を促進させる。科学的にも証明されているのです」。
「雷都」は「ライト」と読める。住民アンケートの結果、車両の愛称が「ライトライン」に決定し、デザインも雷を示す黄色に流れるような流線型の形が決まった。車両は街のシンボルとして、強いメッセージ性を持つようにデザインされたという。確かに黄色と黒の組み合わせは一般的な鉄道よりも強い印象を受ける。 車両の先頭部分を伸ばしてほしいという要望もあったが、要求どおり先頭を伸ばすと運転士の視覚を妨げてしまう。そこで、先頭は伸ばすと同時に細くして、なるべく運転士の視界を確保できるようにした。