宇都宮LRT、「キーパーソン」が明かした成功の鍵 インパクトある外観、「マイカーに負けない内装」とは?
「イブニング」と銘打っているとおり、参加者たちはグラスやおつまみを片手に談笑し、情報交換を行う。欧州の鉄道業界ではこうした情報交換のスタイルは一般的だといい、確かに国際鉄道見本市「イノトランス」でも夕方になると会場のあちこちでこうした傾向が見られた。 「日本でも欧州のように鉄道デザイナーが交流できたら」。鉄道デザイナーたちの思いがRDEとして結実した。2015年の鉄道技術展で関連イベントの1つとして初開催された。鉄道技術展は隔年開催なので、鉄道技術展がない年は独自に行う。今回で10回目だ。
■デザインの具体化で「盛り上がり」加速 デザイナーたちは全国からやってくるが、「“イブニング”だけだと、出張として認められにくいでしょうから、毎回テーマを決めて講演会も開催しています」と、RDE実行委員会の南井健治委員長が付け加えた。南井氏は近畿車輛で国内外の多数の鉄道車両のデザインにかかわってきた。現在は同社の顧問を務める。 RDEの講演会については、「学者や研究者の講演ではなく、現場の担当者から苦労話を聞けるようにしたい」。ライトラインが開業1周年を迎えたこともあり、宇都宮で開催し、鉄道も含めた都市デザインという観点からライトライン立ち上げにかかわったキーパーソンたちの話を聞くことになった。
まず、宇都宮市建設部の矢野公久部長が壇上に立ち、開業にいたるまでの苦労話を明かした。LRTの必要性が市民からなかなか理解を得ることができなかったという。「フランスのストラスブールで運行しているLRTの写真を示しても、“これが宇都宮で運行できるとは思えない”という否定的な声が相次いだ」。今ではとても考えられない話だ。 それでも、矢野氏らが自治会や市民フォーラムでの説明、オープンハウスの設置などさまざまな形を通じて市民に繰り返し説明した結果、徐々に理解が得られるようになってきた。
並行してライトラインのデザインコンセプトも固められていった。コンセプトが徐々に車両として形を帯びてくるにつれ、市民の盛り上がりも勢いが増してきた。 工事現場で見学会を開催した際、応募者は790人にすぎなかったが、ライトラインの車両納入後に実施した見学会では応募者が2万5400人に達したという。開業前には脱線事故などのトラブルもあったが、批判の声は影を潜め、「早く開業してほしい」という声が圧倒的に大きかったという。「車両が格好いいと、乗客もおしゃれをして乗るようになる。街が華やぐのです」と、矢野部長が述べた。