三上博史「若い頃は、どうしたらみんなが“げんなり”するかばかり考えていた」
── 三上さんとプレステ……、あまりイメージが結びつかないのですが(笑)。 三上 でしょう(笑)? 30代、40代の頃かな、けっこう時間ができて。自分がこれまでやってこなかったこと、自分から最も遠いところにあることをやってみようと思ったんです。そこで、「そうだ、ピアスを開けよう」と思い、女友達に相談したら、「ピアス? え、私は嫌だな」って。なんだよ、偉そうにと思ったのですが、「男の人でピアスが似合ってる人ほとんどいないし」って言うんです。それは当たってるなと。似合わないものをあえてする必要はないなと、ピアスは断念しました。 その後、僕の人生に絶対登場しないと思っていたテレビゲームに興味を持ったんです。その時出演した作品で、相手役だった若い女優さんがゲーマーで、「やってみたらどうですか。三上さんだとスイッチって感じじゃないし、プレステ?」って言われて、プレステを買って。やってみたら、「これはニューワールドだ!」ってなったんです(笑)。少しわからないことがあると、YouTubeを観るようになり、YouTube生活もスタートしました。なるほど、YouTubeってこういう需要から広がっていったんだな、ということも新しい発見でしたね。 ── ピアスにしても、ゲームにしても、三上さん、人の意見をちゃんと参考にされるんですね……。 三上 (笑)。え、それって、僕が人の意見を参考にしないように見えているってことですか。 ── すみません。でもそんなイメージ、なくもないです(笑)。 三上 すご~く謙虚ですよ(笑)、特に知らない世界に関しては。
舞台を観た知人が「この人、信用できるなと思った」と言ってくれた
──デビューから今年で45年。いいこともあれば辛いこともあったかと思いますが、ここまで、三上さんを支えてきたものってなんでしょう? 三上 「みなさんの応援があったから」的な、とりあえず言っておけばいいみたいな感じはあまり好きじゃないんだけど、やっぱり愛だなって思います。僕のことを面白がって、支えてくれる人がいる。本当にありがたいことです。ちょうど今日、マネージャーと話していたんです。「ここ数年、ほぼ活動していなかったのに、ちゃんと声をかけてくれる人がいるってすごいことだよね」と言うと、マネージャーは、「本当ですよ。3年間、何もやってないのに」って(笑)。 今年1月に久しぶりに舞台をやって、11月には『HIROSHI MIKAMI / HEDWIG AND THE ANGRY INCH【LIVE】』が控えています。僕は、SNSをやってないんですけど、バンドのみんなが「こんな反応があるよ」って、「三上博史、今年は精力的」「やりまくり」といったコメントを送ってくれました。3年間、ほとんど活動してなかったのに、今年は正月と暮れに活動するので、みなさん驚いているようです(笑)。 ── 今年は1月に『三上博史 歌劇』に出演。そして、11月、12月は、久しぶりにヘドウィグとして舞台に立ちます。ぜひそのお話も聞かせてほしいです。 三上 『三上博史 歌劇』の時、あの寺山(修司)の膨大な世界をどうやって表現しようか、すごく悩んで、初日が開いてからもずっと揺れ続けていたんです。でも、ある知り合いが舞台を観てくれて「この人(三上さん)、信用できるなと思った」と感想をくれたんです。その瞬間、「ああ、やって良かった」と思えました。「自分はちゃんとやれていたんだ、それが伝わったんだ」とすごくうれしかったですね。すみません、泣けてきてしまった……。だけどそこまで持って行くのには、かなりの体力と気力が必要です。今回のヘドウィグも、不安はありますが、なんとかしてちゃんと最後まで務めたいなと思っています。