韓国大統領の弾劾を求めるデモと、民主主義を照らす灯火──連載:松岡宗嗣の時事コラム
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾訴追案採決に合わせ、ソウルで市民の大規模なデモが行われた。現場を歩いた松岡宗嗣がリポートする。 【写真を見る】K-POPに合わせてペンライトを振るデモ文化?
韓国・ソウルで7日、約15万もの人々がろうそくやペンライトを持ち、国会議事堂前に集まっていた。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による戒厳令の発布と数時間後の解除という“騒動”から初の週末。そこには、あきれかえりつつ民主主義を守ろうとする声、寒空の下それぞれの灯火を手に国会を見つめる人々の姿があった。 現在も続く、韓国の市民によるデモの様子をレポートしたい。
突然の戒厳令宣布と解除
「恥ずかしい」。ソウル在住の友人は、戒厳令の宣言と解除をめぐってこう語った。 12月3日の夜、尹大統領は突如「非常戒厳」を宣布した。戒厳令は、国家の非常事態に国会機能や法律などを一部停止し、軍による統制を行う法令だ。集会やデモなどは禁止され、メディアも統制されるなど、国民の権利は大きく制限される。 突然の発令を速報で知り、思わず声が出た。一体何が起きているのかとニュースを追うと、尹大統領の「破廉恥な従北の反国家勢力を一挙に排除する」「国会は犯罪者集団の巣窟(中略)自由民主主義体制の転覆を企てている」といった、目を疑うような言葉の数々が並んでいた。 韓国の憲法では、国会議員の過半数が賛成すれば戒厳令は解除することができると示されている。 発令後すぐ野党の代表が議員たちに国会に集まるよう呼びかけた。一方、政権は物理的にこれを止めようと軍を投入。一触即発かと思いきや、結局議員らは国会に入ることができ、発令後わずか6時間後に戒厳令は解除された。 一連の騒動についてメディアの報道を見ると、冒頭の友人のように「わけがわからない」「世界に対して恥ずかしい思いだ」といった韓国市民の声が少なくなかった。 ただ、あきれかえるのと同時に、民主化を逆行させようとした尹大統領の行為を深刻にとらえる声も多かった。 6日、ソウルの乙支路4街駅で再会し、一緒にプルコギジョンゴルを食べていた友人から「7日の土曜日に、国会前で尹大統領の弾劾を求める大規模な集会が行われる」という情報を教えてもらった。デモに参加するのかと聞くと、友人は当然のような顔で「もちろん」と答えていた。