京都発「履物関づか」が壊れかけの産業に新風 「マメ」や「アーツ&サイエンス」と協業するまで
「和装に合わせる履物としてのモノ作りはしない」――「履物関づか(はきものせきづか)」の関塚真司代表は履物のデザインを手掛け、鼻緒を挿(す)げる職人でもある。彼の言葉通り客層の約半分が洋服に合わせるために履物を購入し、興味深いのはその多くが若い世代である点だ。オーダーメイドで作る履物は、伝統工芸品でありながら現代的で洗練された印象で、和装の履物の域を超えて「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI)」や「アーツ&サイエンス(ARTS&SCIENCE)」、「ビショップ(B SHOP)」や「ジャーナルスタンダード(JOURNAL STANDARD)」から依頼を受け既製品の履物も手掛ける。 【画像】京都発「履物関づか」が壊れかけの産業に新風 「マメ」や「アーツ&サイエンス」と協業するまで
京都市中心部から車で約30分。「履物関づか」の工房兼ショップは街中から少し離れた山間部の岩倉地区にある。2020年4月に開業し、現在の売上高は8000万円で既製品の卸先は10店舗程度。関塚代表は「パラブーツ」での営業や販売を経て26歳のときに祇園の履物店に入った。
なりゆきで転職した履物店で突然修行が始まる
WWD:「パラブーツ(PARABOOT)」から老舗履物に転向したきっかけは?
関塚真司・履物関づか代表(以下、関塚):もともと履物にまつわる文化、例えば舞妓さんの衣装や反物の美しさに興味があった。たまたま前職の社長に知り合い「人がいないから手伝ってくれ」と言われ、ちょうど引っ越したいと考えていた頃で転職した。初日に「そういえば何するんでしたっけ」と聞くと「ちょっと座ってトンカチ叩いてみて」と言われ、真っ白な紙をトンカチでたたくと「結構うまいね」と言われた。
WWD:まっすぐトンカチを落とすのは鼻緒を挿げるときに必要な技術だと聞く。突然修行が始まったということ?
関塚:社長とおかみさんと僕しかいなかったから何でもやった。朝6時に出社して、午前は手仕事をして午後は部屋の整理や販売補助。その生活を続けていると、手仕事は環境や体調の変化でうまくなったり下手になったりすることに気づき、それを調整する方法もわかってくる。それが面白くてのめりこんでいった。さらに続けていくうちに、履物の簡単な作りの中に美しさの原理が見えてきた。「単純作業」の中にどうしたら美しくなるかがわかってきて、自分なりの定義が生まれた。