京都発「履物関づか」が壊れかけの産業に新風 「マメ」や「アーツ&サイエンス」と協業するまで
WWD:自分なりの定義を言葉にできますか?
関塚:技術的な部分は言葉にできる。穴を小さく開け、鼻緒は土台から生き物が生えているように挿げる。小さい穴に鼻緒の大麻芯をググっと入れると木がにょきにょき生えているようなイメージになり、自然物のように美しくなる。
WWD:凛とした佇まいがあり「なんか美しい」と感じるのは「単純作業」と呼ぶ手仕事から生まれていた。
関塚:僕の美しさの定義が守られているところから生まれているかもしれない。もう一つは、足が入っているのが想像できる履物を作ること。足を入れてみたいと思わせるカーブを作ることも意識している。
サプライチェーンを一から構築、手に入らない大麻芯はしめ縄職人に依頼
WWD:台や鼻緒は他の職人が作ったものを活用している。
関塚:分業で行っていて、抱えている職人さんたちにデザイン指示書を書き依頼している。台は他の履物とは少しだけ違う。“そり”(台のカーブ)は天芯(てんじん)と呼ばれるパーツ(編集部注:靴でいうところの木型)を元に形成していくが、天芯は少しS字になっている。台はコルク製で、目が詰まっていてボロボロしないコルクを使っているから軽い。鼻緒は表裏、前坪(親指と人差し指で挟む部分)の細さや素材を指定している。
WWD:鼻緒を挿げる大麻芯はしめ縄職人に依頼して特別に作ってもらっていると聞いた。
関塚:大麻芯は「関づか」の要だが、昔から使われていた大麻芯は価格が高騰し、さらに撚る職人もいなくなった。代わりにナイロンやナイロンと麻、ラフィアなどを撚ったものになった。ナイロンは伸びるし滑るから、足を測り足に合わせて作るのに芯縄が伸びると元も子もない。大麻芯が手に入らないことは仕事ができないくらい大きな問題だった。もともと大麻芯を作っていた栃木の工房を訪ねると「もう作らない」と断られ、情報を仕入れては全国各地を巡ったがなかった。困っていたときに、毎年参拝する伊勢神宮でしめ縄をみてこれだ!と思った。作っている人は京都市役所の裏に住んでいて、僕と同じ年の三代目。話を聞いてくれて作ってもらえることになった。