京都発「履物関づか」が壊れかけの産業に新風 「マメ」や「アーツ&サイエンス」と協業するまで
WWD:しめ縄と芯縄では大きさが違うが。
関塚:原理は一緒だった。大きい寺社仏閣では大きなしめ縄もあれば榊やポールを縛る紐も大麻だったりする。縄の勉強で作ったことがある職人さんがいて作ってもらえることになった。日本中探しても大麻芯を使っているのは僕しかいない。さまざまな履物の修理も受けているけどほとんどがナイロンだ。
WWD:大麻芯は高価そうだ。
関塚:最初1セット1万円と言われた。ちなみに安いものは1セット7円程度で1万円はとてもじゃないけど難しい。限界まで下げてくださいとお願いして今は1セット1200円で月に20足分しか作れない。必然的に1年で240足しか作れないことになるけど、もう少し増やせるときは依頼して頑張ってもらっている。
産地と呼べる場所がなく、失われつつある技法
WWD:大麻芯が買えなくなったようにサプライチェーンでの課題が多そうだが、今一番困っていることは?
関塚:課題だらけだ。大麻芯を作ることができるのは1人しかいないし、コルクは商社が仕入れたものを使うしかないが年々質が悪くなっている。畳表(たたみおもて、竹で編んだ台)は竹の皮を中国から仕入れて(昔は日本産だった)手編みして台にするが、キレイに編める方は2人しかいない。この技術があと10年程度でなくなると思うと絶望している。
WWD:技法・技術を継承することは難しいのか。
関塚:畳表を作る職人は技法や技術で財を成した人でもないから「こんなの誰がやるの?教えてどうするの?」という姿勢で、技法や技術の存在を紹介するために取材を依頼したが受けてもくれない。徳島の個人宅で作っているのでそもそも産地とも呼べないから、継承者を集めるのも難しい。足袋は徳島が産地で何社かあるので何とかなりそう。皮革はいくらでも手に入るが価格は高騰している。組合は大阪にしかない。東京の組合はつぶれ、その時に問屋がメーカーに卸す値段で小売りを始めてしまったため、(ビジネス生態系の)崩壊が起きた。