京都発「履物関づか」が壊れかけの産業に新風 「マメ」や「アーツ&サイエンス」と協業するまで
WWD:一緒に仕事はしたいけれど営業はしない。
関塚:仕掛けを置いて待っている(笑)。「アーツ」のソニア(・パーク)さんとは飲みに行く仲で、もともとソニアさんが提案することがとても好きだった。めちゃめちゃ高いタオルを販売するなど、ありえないことがあの店では起こっていたから、いつか絶対一緒に仕事をしたいと思っていた。「アーツ」に置くならこういう仕様と考え準備してある日提案した。
WWD:素材や製法をこだわればこだわるほどモノ作りが大変になる。日本でモノ作りを続けるために必要なこととは。
関塚:作り手がオープンにすることが必要だと感じている。僕ですら辿りつけないことがある。できることなら僕が全部取材して発信したい。僕じゃなくてもいいが、こういう技術者がいると出していかないとやりたい人が出てこないし技術が失われる。
そう思っている反面、実は半分諦めているところもある。終わってもいいやではなく、3Dプリンタの可能性を探っている。アメリカ製のカーボンの3Dプリンタを使って履物を作ることができないか検証している。3Dプリンタは手が機械になっただけなので、悪いことではないと思っている。
WWD:3Dプリンタは無駄がないし設計図さえあればどこでも出力できるので新たな可能性はある。とはいえ手仕事がなくなるのは複雑な気持ちになる。改めて履物の魅力は。
関塚:履物はそもそもかかとがないし簡単に脱げて履ける。日本の建築は外と中がありはっきりしていて、上がり下がりが多いから、脱ぎ履きが楽な方が理にかなっている。
WWD:店舗兼アトリエが岩倉だった理由は?
関塚:一番は用事のない人に来てほしくないから。手仕事が生業なので、例えば(京都市中心部の)河原町に構えると人がいっぱい入るし、何なら少し涼もうとする人も来る。わざと来るのにためらう場所にしている。行くぞというスイッチが入らないと来られないように。もう一つは四季を感じてほしいから。(山が近く)虫や鳥の声が良く聞こえるし季節によって変わっている。四季に敏感になると僕の履物がいいと思ってもらえると感じている。