京都賞に透明マント考案、全球凍結研究など3氏 稲盛財団
稲盛財団(京都市、金澤しのぶ理事長)は2024年の京都賞を、自然界の物質にない性質を持つ人工物質「メタマテリアル」の理論を築き、物体を見えなくする透明マントなどを考案した英インペリアル・カレッジ・ロンドン教授のジョン・ペンドリー氏(80)と、全地球表面が凍りついた「全球凍結」を解明し、またプレートテクトニクスが地球史の前半から起きていたことを実証した米ハーバード大学名誉教授(カナダ・ビクトリア大学客員教授)のポール・ホフマン氏(83)ら3氏に贈ると発表した。
ペンドリー氏は「先端技術部門」での受賞で、理由は「メタマテリアルの理論構築による材料科学分野への貢献」。物質の電磁気的な性質を人工的に設計するのは難しいとされた。しかしペンドリー氏は、電磁波の波長より小さい構造体を作れば、自然界の物質にない新しい性質を持つメタマテリアルができるとの理論を示した。例えば、普通のレンズでは光の波長より小さい物は見えないが、負の屈折率を持つメタマテリアルでできた「スーパーレンズ(完全レンズ)」なら、理想的には無限の解像度を実現できる。メタマテリアルで光を巧みに迂回(うかい)させれば、透明マントもできる。2000年代初頭から研究が飛躍し、幅広い分野で展開が期待されている。
同財団は「材料科学分野において革新的かつ重要な進歩をもたらし、新たな学際的研究領域を創出し、新規材料の社会応用への道を開いた」と評価した。
ホフマン氏は「基礎科学部門」での受賞で、理由は「生命進化の加速につながった全球凍結と地球史前半までさかのぼるプレートテクトニクスの実証」。ホフマン氏は膨大な地質調査などを通じ、全球凍結が約7億2000万~6億4000万年前に2回起きたことを明らかにした。この激変は、約5億2000万年前の動物の爆発的多様化「カンブリア爆発」につながった可能性がある。また野外調査を通じ、大陸の衝突合体、超大陸の形成や分裂が約25億年前から4、5回繰り返されてきたことを示し、プレートテクトニクスが約46億年の地球史の前半からあったことを明らかにした。