NVIDIAも焦点当てる「エージェントAI」、すでに「前例ない」レベルで利益を生み出すほどの影響力
エージェントAIの実装例、保険ブローカー企業の事例から見える可能性
エージェントAIの実力を示す興味深い事例が、ある欧州の保険ブローカー企業から報告されている。同社は競合他社に運用チーム全体を引き抜かれるという事態に直面。この危機的状況を打開するため、コンピュータサイエンティストの知人に支援を要請。その結果、AIエージェントのみで構成される新たな運用チームを構築することに成功した。 AIエージェントチームは、商業マネージャー、保険数理・引受機能、会計士、カスタマーケアマネージャー、ITスタッフなど、多岐にわたる役割を担当。3カ月という短期間でチームが立ち上がり、保険金請求率の目標を2倍上回る成果を上げた。人件費、福利厚生費、給与税などが運用費用の約65%を占める保険ブローカー業界において、AIエージェントの導入によりこれらのコストをゼロに抑制することにも成功している。 通常、保険引受業務における純利益(保険料から保険金支払いと運用費用を差し引いた額)は、好調な年でも5%程度。これに対し、AIエージェントチームは45%という前例のない純利益率を達成。ただし、この数値は「倫理的に問題がある」と判断され、後に調整が必要になったという。 その理由は、AIエージェントが保険業界の基本原則である「相互化」や「リスクプーリング」の概念を超えた判断を行ったことにある。AIエージェントは無限に近い認知能力を活用し、データを新たな方法で分析。特定の顧客が保険金を請求する可能性が高い時期や状況を特定し、そうした顧客を拒否したり、特定のタイミングで解約を促したり、価格設定や契約条件を調整したりする介入を迅速に実施した。これらの施策は技術的には合法であったものの、保険業界の倫理的観点からは問題があると判断された。その後、同社はAIエージェントに倫理的な調整を行い、非倫理的な行動を抑制することに成功。この経験を生かし、同システムを他部門でも展開しているという。 この事例は、エージェントAIの可能性と課題を同時に浮き彫りとするもの。AIエージェントは人間を超える分析能力と実行力を持つ一方で、業界の基本原則や倫理的価値観との整合性を保つための訓練が必要不可欠であることを明らかにした。