アイドル運営の切実な経済事情とは 握手会など対面イベントは生命線
アイドル視点、ファン視点から考える必要性
一方、アイドル自身から見た握手会や特典会など物販を含む対面イベントの必要性について、Aimプロデューサーで元アイドルのほしのまりあさんは次のように説明します。 「アイドルのギャラは歩合制が多く、握手会で受け取ったチェキ券など特典券の枚数がギャラに直結しますので、握手列が長い子のギャラは多く、少ない子は少なくなります。これはメンバー同士が切磋琢磨する環境づくりに一役買っており、グループのセンターは一番人気の子がなることが多いですがその理由付けにもなります。また、辛いことも多いアイドル活動でステージ後にファンから直接『よかったよ!』と言ってもらえることがモチベーションを向上させるんです」 ではもう一つ、ファンから見た握手会はどうなのでしょうか。SNS上に寄せられたファンの声をみると「その日の衣装も含めイベントに参加した記念」、「顔だけで推しは選べない。人となりを知るための貴重な機会」、「推しとの思い出作り。チェキは自分へのおまけ」、「アイドルにライブの感想を伝えたい」、「舞台のおひねりみたいなもの」、「楽しいライブをありがとうと感謝の気持ちや感情の共有」、「来たよ!という証」、「頑張ってるアイドルを応援するため、チェキを撮ってツイートしている」など、さまざまです。 ステージの感想を伝えたい、感動を共有したい、直接話をしてみたい、といった気持ちが後押しするのでしょう。
握手には意外な効果も? アイドルならではの儚さとは
また、全国各地で10年以上、アイドルのレッスンをしている日本ご当地アイドル活性協会代表の金子正男さんは別の面から握手会イベントの効果について話します。 「握手はアイドルさんをキレイにさせる魔法なんです。ライブ前に舞台袖でメンバー同士で相手が喜ぶ言葉を言ってから交互に握手をさせたり、ハグをさせたりします。そうすると不思議に表情がやわらいだり、心が温まるステージに変身するんです。きっと『握手』することで体温や喜びの圧が伝わるのかもしれません。それはアイドルとファンが対面する握手会にも言えるのでは?と思っています」 そう言えば政治家も『選挙活動で握手に勝るものはない』と、街頭などでの握手を重視する人がいますが、握手には人の心を動かす力があるのかもしれません。 その場で写真になるチェキには、その時の思い出の記録、推しに会った証といった意味もあるようです。いつか卒業していなくなるというアイドルならではの刹那的・儚さからくる感情が後押しをしている面もありそうです。 (取材・文:志和浩司)