江戸前とスパイスの美味なるタッグ! 話題の“変タイ寿司”が溝の口から虎ノ門へ
「当初は伝統的な江戸前寿司を提供していました。でもある日、数年来の常連さんから『タイ料理の要素を取り入れた寿司を食べてみたい』という無茶ぶりがあって、僕の方もやる気になっちゃったんですよ」と菅氏は笑う。後日、貸し切りのお試しで披露したところ大評判となり、やがて月に数回の「変タイ鮨コース」へと発展。その噂が口コミで広まっていった。
「タイ料理のエッセンスを用いて、寿司を再構築するイメージですね」と菅氏。酢飯と、タイのスパイスや調味料との調和をはかる。また、酢飯と寿司種の関係性を見つめ直し、新たな発想から美味へとつながる答えを導き出す――。ジョークとともに笑顔を振りまきながら、時に真剣な表情を見せる菅氏の中には、常に未知なる美食への探求心が渦巻いているに違いない。
「お客様が『あれ? なんだろうこの味は』って、一瞬頭が混乱するかもしれないのですが、その驚きをおいしく楽しんでいただけたらうれしいです」。さすがは“変タイ寿司”の作り手、自身も相当な変わり者である。
初体験の組み合わせに微笑みが止まらない!
「鮨 すがひさ」は平日ランチにウォークインで「エスニックちらし寿司」1,650円の提供もしているが、真骨頂はそれ以外の日時に供されるおまかせのコースだ。こちらは予約制で1人23,000円となり、創造性にあふれる多彩な料理を楽しめる。その一例を紹介しよう。まずは「グリーンカレー白子茶碗蒸し」。
本来用いる和風ダシの代わりに、グリーンカレーを使って卵と合わせている。中にはフグの白子を閉じ込めて、よりクリーミーなテクスチャーと濃厚なコクを演出。ベースのカレーはココナッツミルク、ナンプラー、青唐辛子、バイマックル、エシャロットなどを使った本格派で、まろやかな甘みと余韻の爽快な辛みがたまらない。
寿司の要素を分解し、組み立て直した一つの形が「〆鯖の生春巻き」。米をライスペーパー、酢をなますと〆サバで酢飯に見立て、新たな発想から米と魚を共演させた一品だ。なますはベトナムの方がポピュラーだがタイでも親しまれているうえ、日本の伝統料理でもある。