「かわいがっていた部下」からのパワハラ告発で出世の階段から転落した会社員男性が「復讐に選んだ方法」
「パワハラ」加害で、出世の階段を滑り落ちる
浜中さんはその後も、旧来の上司・部下関係や職場風土が次第に通じなくなってきていることに不安や焦りを感じながらも、事業本部長としての任務を着実にこなし、勤務する会社では役職定年の年齢にあたる55歳を過ぎても役職延長を重ねていく。 ところが、執行役員、または子会社社長のポストを手にできると考えていた矢先、部下からパワハラで訴えられてしまうのである。2019年、58歳の時だった。 「寝耳に水で、まさか、この自分が……というのが、正直なところでした。伝統的な企業文化も、阿吽の呼吸も通用せず、杓子定規(しゃくしじょうぎ)に上司・部下関係を片づけようとする風潮が年々強まっているのは重々、承知していたつもりでしたが……。もちろん、私としては職場の優位性を利用して嫌がらせをしたり、無理な職務を命じたりしたことはありませんし、パワハラ防止法の定義に照らし合わせても、今もパワハラに該当する行為であったとは考えていません。しかし……事実認定されてしまい……」 言葉に詰まるだけでなく、いつしか顔面蒼白(そうはく)となり、嗚咽(おえつ)していた。 パワハラ被害を受けたと訴えた営業部の部長は、浜中さんにとっては「手塩にかけて育て、部長昇進も後押しした部下」。訴えによると、複数ある営業部門の中でもその部下が部長を務める部は営業実績が最下位であるとして、浜中さんは業務時間外の深夜や週末にまでその部長に電話をして注意、指導したほか、営業部門各部署の社員の多くが着席している時間帯を見計らって、大声でその部長を叱りつけるなどの行為を繰り返した。その影響で、うつ病を発症して約1か月間の休職を余儀なくされ、自身の職務遂行のみならず、統括する営業部全体の業績悪化を招いたというのが、訴えの内容だった。 人事部で営業部内外の関係社員にヒヤリングを行うなどした結果、パワハラ行為であったと事実認定されたのだという。浜中さんの弁明は認められなかった。 譴責(けんせき)の懲戒処分を受け、役職を解かれることに。当然ながら、執行役員も、子会社社長への道も閉ざされた。 「その部下の営業部長が訴えた内容は、私もかつて上司から受けた指導と何ら変わりません。私自身、鍛えられたお陰で実績を積み重ねて、事業本部長にまで上り詰めることができたと思っています。それが、今では指導ではなく、懲戒処分まで受ける不当行為とみなされる。最後の最後で、出世の階段を滑り落ちるなどとは、思ってもみませんでした……」