G7財務相・中央銀行総裁会議ではロシア凍結資産の活用とドル高・日本の為替介入が注目点
ロシア凍結資産のウクライナ支援への活用に問題点
5月24、25日に、G7財務相・中央銀行総裁会議が議長国のイタリアで開かれる。注目点は、第1に、ロシア凍結資産の運用益をウクライナ支援に活用すること、第2に、中国の過剰生産問題、第3に、ドル高と日本の為替介入だ。金融市場に与える影響は、第3が最も大きくなる可能性がある。 2022年のロシアによるウクライナ侵攻を受けて、先進国はロシア中央銀行の外貨準備の凍結を決めた。この凍結資産をウクライナの軍事、経済支援に活用することが長らく議論されてきた。ウクライナは、凍結資産のすべてを自国の支援に回すことを主張しているが、先進国の間では、国際法に照らして適切かどうかという慎重意見もあった。特に慎重であったのは欧州諸国だ。 適法性という観点に加えて、外貨準備が凍結されたうえに没収、処分されるという前例を作ることが、金融市場や国際資金決済に悪影響を与えることを警戒したためだ。 仮に自国の外貨準備も凍結され、処分される可能性が将来あり得ると考える国が出てくれば、そうした国は外貨準備の保有を抑える可能性があるだろう。その場合、外貨不足で外貨建て債務の返済が難しくなるとの観測が生じ、通貨が大きく減価する可能性が出てくるなど、国際流動性危機につながる恐れさえある。 また、外貨準備ではなく、そうした国の民間銀行も、海外に持つ外貨建て資産を凍結、処分されることを警戒してその額を削減すれば、国際資金決済(国際送金)に支障が生じる可能性が出てくる。それは貿易など国際間での経済活動の妨げとなるだろう。 さらに、外貨準備など外貨建て資産を削減する動きが生じれば、それはドル、ユーロなど主要通貨の下落につながる可能性もあり、欧州諸国はユーロ安リスクを警戒しているとされる。
運用益の活用で合意へ
そこで、国際法に準拠しつつ、こうした国際金融上の問題を生じさせない手法として、米国が欧州諸国に提案したのが、ロシアの凍結資産ではなく、それが生み出す利息などの運用益をウクライナ支援に活用する案だ。 G7財務相・中央銀行総裁会議に先立ち、欧州連合(EU)加盟国で構成するEU理事会は21日に、凍結したロシア資産の運用益をウクライナ支援に活用することを正式に合意した。 G7とEUが凍結したロシア中銀の資産は2,600億ユーロ(約44兆円)~2,800億ユーロ(約47兆円)に上るとされる。このうち約3分の2はベルギーの決済機関「ユーロクリア」などEU域内で管理されている。さらに、その運用益は年間約30億ユーロ(約5,000億円)の見込みで、9割がウクライナの軍事支援、1割が復興支援に充てられる。G7財務相・中央銀行総裁会議でも同様な決定がなされるとみられる。 運用益の活用は、妥当な着地点と考えられるが、凍結資産全体を活用する場合と比べて、利用できる金額はわずか数%にとどまる。そのため、ウクライナへの軍事支援、復興支援については、引き続き先進国の大きな負担が免れない点は忘れてはならない。