G7財務相・中央銀行総裁会議ではロシア凍結資産の活用とドル高・日本の為替介入が注目点
中国の生産過剰問題も議題に
G7財務相・中央銀行総裁会議では、中国の過剰生産問題も議題になる見込みだ。中国経済の供給過剰問題や、政府による巨額の補助金を通じて、電気自動車(EV)、鉄鋼などが海外に安値でダンピング輸出されている問題が議論されるだろう。 バイデン大統領は14日に、不公正貿易を理由に、中国製EVなどの関税率を大幅に引き上げる措置を発表した(コラム「世界でEVへの逆風が強まる」、2024年5月17日)。この措置も、自由で公正な貿易という観点からは問題がある貿易規制と言えるだろう。自由貿易を標榜する日本が主導して、中国だけでなく米国の貿易政策の問題点についても提起して欲しいところだが、G7は中国・ロシアに対抗する勢力の会議という性格を強めるなか、実際にはそれは難しいだろう。
円安のきっかけとならないか注目
4月にワシントンで開かれた G7財務相・中央銀行総裁会議、G20財務相・中央銀行総裁会議と同様に、ドル高も議題になるだろう。日本はその際と同じく、為替安定についてのG7の合意を再確認することで、円安けん制を図る可能性が考えられる。 ただし、日本を含めたアジア諸国以外の主要国では、ドル高・自国通貨安の問題はそれほど深刻になっていないことから、ドル高がG7の大きな議題とはならないのではないか。 また、日本が再びドル高の問題を正面から取り上げると、4月末から5月初めにかけて日本政府が為替介入を実施したかどうかを他国から問い質され、批判される可能性もあるだろう。4月末、あるいは5月初めに政府が為替介入を実施したかどうかは、5月末に正式に明らかになる。 日本の為替介入を巡っては、米国との間で軋轢が生じている。イエレン米財務長官が、今回のG7の場でも為替介入に否定的な発言を行い、日本の為替介入を暗にけん制すると、日本が再度為替介入を行うことが難しくなるとの観測から円安が進むきっかけとなる可能性もあるだろう。 (参考資料) 「EU、ロシア凍結資産活用で正式合意…5000億円程度の運用益をウクライナ支援に」、2024年5月22日、読売新聞速報ニュース 「ロシア凍結資産の利息でウクライナ支援、米提案をG7で協議へ」、2024年4月25日、ロイター通信 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英