ラジオの前の「あなた」に語りかける原田年晴さん スポーツ中継失敗や浜村淳さんの壁越え 一聞百見
「浜村さんとは1桁以上数字が違いました。勝ち目あらへん。前任者より数字を大きく落とし『えらい失敗や』と言われました。その後、少しずつ上がりましたが、お二人の足元にも及びませんでした」
多くの歌手と交友がある。「歌謡曲これイチバン!」という番組で、歌手の石原詢子(じゅんこ)さんをアシスタントに迎えた。
「石原さんに新曲の候補が3曲あり、どれがいいかリスナーに聞いてみようとなった。電話投票で決まった曲にしたら、10万枚超の大ヒット。過去3万枚が最高だったのに。さらにNHKの紅白歌合戦への出場も決まった。その後も水森かおりさんら共演した歌手が次々に成功した。私はレコード業界では『踏み台』といわれてます(笑)」
歌手のインタビューで心がけていることがある。
「原田さんは他局では質問されないことを聞くと言われます。歌手の日常を引き出し、そこから人柄がわかればと思う。ネットで簡単に調べられる時代ですが、経歴はほとんど見ません。白紙の状態の方が絶対面白い。公開されている情報の先を行けば、人間性が見えてきます」
40代後半で始めた「ほんまもん!原田年晴です」は14年半続いた長寿番組だ。「生声聞かせて」という人気コーナーがあった。
「携帯電話が普及し始めたころで、いきなりリスナーの携帯にかける。今から分娩(ぶんべん)台に移ろうかという女性が出て『痛い…もう電話切ります』なんてことがありました。ゴルフ場のグリーン上から『これ決まったらパーでんねん』と言うので『電話を穴のそばに置いて、音を聞かせてください』とお願いしたら『カラン』。見事、パーです」
知らない人に電話し、知識のないまま話を引き出すと、世の中が見えてくる。
「電話に出たのが宅配便の配達員。『今、新幹線の中なんです』『なんで』『配達で使うときがあるんです。あっトンネル』『ブチッ』。もう電話がつながりません。リスナーもハラハラします。今の番組にはこんなの無いよなあ」