ラジオの前の「あなた」に語りかける原田年晴さん スポーツ中継失敗や浜村淳さんの壁越え 一聞百見
ラジオ番組のパーソナリティー(進行役)を務めて約40年になる。ラジオはリスナー(聴く人)との距離が近い。テレビは「みなさん」と大多数に、ラジオは「あなた」と個人に呼び掛けるという。インターネットの登場で動画や音声の新たなコンテンツが台頭、ラジオのリスナーはずいぶんと減った。それでもラジオの未来を信じている。 おもむろにスマートフォンを取り出す。ラジオ番組が聴けるアプリ「radiko」で、パーソナリティーを務める「原田年晴 かぶりつきサーズデー!」の聴き逃し配信を再生した。 アシスタントの清水綾音さんに自民党と国民民主党との「パーシャル(部分)連合」について説明する。飲み屋で、おっちゃんとおねえちゃんが会話しているような感じの会話だ。冷蔵庫の機能である「パーシャル」「チルド」へと話が転じ、入れ歯洗浄剤の商品名「パーシャルデント」へと脱線していった。 「放送の最大のねらいはいろいろな言葉を投げかけて、リスナーがその一つをとらえ、ラジオで今日、こんなこと話してたで、と私の見えない所で会話してもらうことです。人と人とが言葉で結びつくことがこの仕事の終点だと思います」 その言葉はどこから探してくるのだろうか。 「ネタの『引き出し』は大事です。よくネタを書き留めている人がいますが、ネタ帳は作りません。放送中、いちいちネタ帳を繰っていたら間に合わない。知識が自分の中に入っていないと意味がありません。そのためには外へ出て取材することが大切です。人と話したり、体験したりしたことは忘れませんから」 ラジオはリスナーとの距離が近い、といわれる。 「リスナーがそこにいることを想像しながらしゃべります。何をしゃべれば、向こうが応じてくれるか、感じてくれるか。ラジオは言葉で全部想像してもらわないといけません」 テレビとの比較でも説明してくれた。 「違いはV(ビデオ映像)を使うか否か。テレビはVにふったらだいたい終わり。最後にキャスターに戻してコメント1分くらい。ラジオはVの部分を映像があるかのようにしゃべる。大事なのはリスナーの頭の中にVを描き出させるかどうかです」 テレビとラジオの距離感の違いを指摘する。