スタジオジブリ激怒「看過できない」 イラストの切り抜き販売は「著作権侵害」なのか?
●同一性保持権の侵害になるのはどういうケース!?
――そのイラスト集は、人の創意工夫により選別されたイラストが編纂されている以上、そのイラスト集もまた一つの著作物となるのではないでしょうか? たしかに、一つ一つのイラストに加えて、そのイラスト集も「編集著作物」として、一つの著作物として認められる可能性はあります。 しかし、同一性保持権の侵害になるのは、「あの著作物の表現が改変されているぞ」とわかるような方法で改変する場合です。 編集著作物の場合、たとえば、そのイラスト集に掲載されている複数のイラストのうちの一つだけをまったく別のイラストに差し替えて出版するような場合は、「あのイラスト集が一部改変されているぞ」ということになり、同一性保持権になると考えられます。 しかし、そのイラスト集のうちの一つのイラストを切り出して、単体で販売したとしても、「あのイラスト集の表現が改変されているぞ」ということにはならないですよね。 ですので、やはり同一性保持権の侵害にはならないと考えられます。 ――では、ジブリの書籍が、イラスト集ではなく、テキストとイラストが組み合わさった絵本のようなものだとしたらどうでしょうか? この場合、その絵本全体で一つの著作物になると思われがちですが、実は、テキスト部分と、各イラストは、別々の著作物だと考えられています。 なぜなら、その絵本のうちのテキスト部分だけを読み物として利用することができるし、一つ一つのイラスト部分も、一つのイラストとして利用することができるからです。 ですので、その絵本の中の一つのイラストを切り出したとしても、複数の著作物の中から一つの著作物を取り出したにすぎず、著作物を改変したことにはならないのです。 ちなみに、マンガ(吹き出しのテキストとイラストの組み合わせがコマ割りになっているもの)については、絵本の場合とは異なり、各コマのイラスト一つ一つがそれぞれ単体の著作物なのかどうなのか、明確な考え方はありません。 あるマンガを引用する際に、コマの配置を変更するような改変が加えられたことについて、同一性保持権の侵害を認めた裁判例がありますが(「脱ゴーマニズム宣言事件」)、これはイラストの配置の改変というよりも、テキストも含めての文脈が改変されたことに同一性保持権侵害を認めたものなので、マンガの一つのコマだけを切り出した場合に、同一性保持権の侵害が認められるかは別問題だと思います。