がん患者と医療者はどう分かり合えるのか――臨床腫瘍学会で患者・市民向け特別プログラム「PAP」開催
2024年2月22~24日に第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(https://www.congre.co.jp/jsmo2024/)が開催された(名古屋市での現地開催とライブ開催併用のハイブリッド形式)。今回も医師・研究者向けのプログラムと同時に、がん患者さんやご家族、市民が参加できる特別プログラム「ペイシェント・アドボケイト・プログラム(以下、PAP)」も行われた。本稿では、PAPプログラムの中から、患者と医療者のコミュニケーションとがん診療の集約化・均てん化についてリポートする。【全2記事の1】 (ペイシェント・アドボケイト・プログラム(PAP)<https://www.congre.co.jp/jsmo2024/pap.html>)
◇PAP特別企画3 パネルディスカッション「患者と医療者のより良いコミュニケーション」
特別企画3では、患者と医療者のコミュニケーションについて、参加者の質問に答えながらよりよいあり方について語り合った。発言要旨を紹介する。 ◇ ◇ ◇ ●勝俣範之先生(日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科) がんの治療ではいくつも選択肢があることが多い。インフォームド・コンセント(IC)はだいぶ浸透してきたが、治療の選択肢を列挙して「どれにしますか?」と決定権を全て患者さんにゆだねてしまう“松竹梅型IC”や“自己決定権押しつけ型IC”はよくないと感じている。患者さんも、全部自分で決めたい人、医師にお任せしたい人、話しながら医療者と一緒に決めたい人など、考え方や価値観はさまざまだ。 医師はできるだけ客観的な視点で説明するようトレーニングを受けているが「私の家族だったら、…。私なら、〇〇を選びます。」などとI(アイ、“私は”を主語にする)メッセージで説明することがおすすめだ。医師の主観的な感想、人間的な温かみのある意見として受け止めやすいだろう。 がん治療において、医療者が患者さんの気持ちを否定しないことは大事だと思う。「絶対に治りたいんです。治せますか?」と問う患者さんに対して、「治せません」と返すことは適切ではない。まずは「病気を治したいのですね。その気持ちは本当に大切だと思います」と肯定することでコミュニケーションが始まる。もしそのような対話が難しい場合は、味方になってくれるほかの医療者を探すこともよい選択肢になるだろう。