ザル法ゆえの不公平さ 「舛添疑惑」にみる政治資金規正法と百条委問題
猪瀬直樹元都知事の選挙資金疑惑に続き、舛添要一前都知事による政治資金の私的流用疑惑に絡んで、その存在が改めて注目された百条委員会。証言拒否に禁錮刑が科されるなど実効性が高い百条調査権をめぐっては、前知事の参議院議員時代の政治資金の使途が対象となるか否かが議論となった。地方自治・市民自治を研究する 千葉大法政経学部の関谷昇教授は「舛添氏の疑惑は参議員、都知事時代を通して百条委の調査対象」と述べるとともに、「抜け道の多い政治資金規正法は『ザル法』ゆえに不公正さを生んでいる 」と訴えた。(フリー記者・本間誠也)
◇ 「舛添知事の参議院議員時代の政治資金の問題は百条委員会の対象になるか」。6月8日の都議会一般質問の場で、田中たけし氏(自民)がこう質問した際、都の中西充総務局長は「地方自治法の第100条に照らし合わせると、(百条委は)地方自治体の事務に直接かかわることが対象。参議員時代の問題はなじみにくい」と答弁した。この質疑についてはテレビやネット動画を通じてご記憶の人も多かろう。
都の幹部に質問すること自体「おかしい」
こうしたやり取りについて関谷教授は「この質問を議員が行うことに加え、行政幹部の総務局長が答えていること自体がそもそもおかしい」と指摘する。「大前提としてまず言いたいことは、百条委というのは議会によって設置されるものですから判断するのは各議員なんです。基本的に議員がそうした質問をし、所見という形であったにせよ、都の幹部が発言すべきことでは全くないと思います」。 続けて「強い権限を有する百条委の設置は議会の固有の判断 に関わることですから、あくまで議員の判断なんです。理事者側に問うのは筋違いもはなはだしい」と語気を強めた。 舛添前知事の政治資金の公私混同疑惑に関しては、参議員時代にとどまらず、過去に購入した美術品などが現在も転売されずに所有しているかについても疑義が呈されていた。 「都議会では千葉・木更津のスパホテル問題も含めて舛添氏本人のトータルな政治資金の使い方が問われていたはずです。議会として参議員時代と都知事になってからの双方を一貫して追及しているのに、百条委では参議員時代だけを切り離すというのは逆におかしい。外す理由は見当たらないと思います」 さらに「舛添氏の過去から現在までの政治資金の問題を追及し、都議会としてどう事実を解明して責任を問うのか。この点について集中審議では不十分だっただけに、強い権限を有する百条委の設置提案が出てきたことは議会の役割に照らして適切なことだったと思います 」と述べた。 百条委をめぐる一般質問での議員と理事者側との前出の質疑は、野党からの議案提出をけん制するための「いわゆる『出来レース』に近いものと疑われても仕方がないのでは 」とも振り返った。